2006年10月〜12月にかけての東アフリカでの記録的な大雨は、Aedes 属の蚊の異常発生をもたらし、ケニア、ソマリア、タンザニアの3カ国でリフトバレー熱: Rift Valley Fever(RVF)の流行を引き起こした。それに対応するため、各国保健省、WHO本部、WHOアフリカ事務局、米国CDCなどによる国際的連携活動が実施された。このレポートは流行地域において実施された対策活動と、暫定的な疫学情報を著すものである。
ケニア:疫学調査の結果、発端者は2006年11月30日の発症であることが判明し、その日から2007年3月12日までに684例が報告された。うち、死者は155例(致死率23%)、検査診断されたのは234例(34%)であった。患者は56%が男性で、年齢中央値が27歳(女性は29歳)、患者の43%が15〜29歳であった。大部分の患者は、ケニア東部(North-Eastern Province, Coast Province)から報告されていた。2006年12月下旬より、地域活動を含めた予防対策が開始された。家畜の屠殺は禁止とされ、殺虫剤散布や防虫ネットの配布が行われるとともに、ラジオ放送やパンフレットを利用したRVFについての啓発活動や地域集会などが行われた。家畜の屠殺禁止令については、食糧不足の問題により十分守られなかったが、多くの住民がミルクの加熱などの予防策をとるようになった。3月9日に死亡した患者が最後の報告症例であった。
ソマリア:2006年12月19日〜2007年2月20日までに114例が報告され、うち死者は51例(致死率45%)、検査診断確定例は3例(3%)であった。大部分の患者はケニアと国境を接する地域(Lower Juba Region, Gedo Region)から報告されていた。ソマリアのWHO地方事務局は、医療従事者に対してRVFの診断や対処法に関する教育を実施したが、その後、感染地域における対策活動は安全上の問題で阻まれた。ソマリアにおける最後の症例報告は、2007年2月20日であった。
タンザニア:疫学調査の結果、2007年1月13日に第1例が発症、5月8日までに290例が報告され、うち死者は117例(致死率40%)、検査診断例は154例(53%)であった。大部分の患者はタンザニア中央部(Dodoma, Morogoro, Singida)から報告されていた。対策としては、動物とヒトの両方に関するサーベイランスの強化、症例への対処に関する指導の徹底、住民の啓発、家畜の隔離と輸送制限、屠殺の禁止などが実施された。実地調査チームの報告では、屠殺禁止令については、地域により厳密に守られていない所もあった。5月8日現在、患者発生は続いているものの、次第に減少してきている。
(WHO, WER, 82, No.20, 169-178, 2007)