The Topic of This Month Vol.28 No.6(No.328)

HIV/AIDS 2006年

(Vol.28 p 161-162:2007年6月号)

エイズ発生動向調査は1984年に開始され、1989年〜1999年3月までは「後天性免疫不全症候群の予防に関する法律(エイズ予防法)」に基づいて実施されていた。1999年4月からは、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(感染症法)に基づく感染症発生動向調査として全数届出が求められ、2003年11月の感染症法改正で4類から5類感染症に変更された(報告基準はhttp://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-05-07.html参照)。本特集のHIV感染者(AIDS未発症者)数とAIDS患者数はエイズ動向委員会による2006(平成18)年年報(2007年5月22日確定)に基づく。なお、同年報は厚生労働省疾病対策課より公表される(http://api-net.jfap.or.jp/htmls/frameset-03-02.html)。

1.1985〜2006年までのHIV/AIDS報告数の推移:2006年に新たに報告されたHIV感染者は952(男863、女89)で、2005年(832)を上回り過去最高であった。AIDS患者は406(男368、女38)で過去最高であった(これまでの最高は2004年の385)(図1)。

国籍・性別では日本国籍男性がHIV感染者全体の83%(2004年82%、2005年85%)、AIDS患者全体の83%(2004年75%、2005年79%)を占めている。

1985年〜2006年12月31日までの累積報告数(凝固因子製剤による感染例を除く)はHIV感染者8,344(男6,524、女1,820)、AIDS患者4,050(男3,539、女511)で、人口10万対ではHIV感染者6.531、AIDS患者3.170となった。なおこの他に「血液凝固異常症全国調査」において血液凝固因子製剤によるHIV感染者1,438(生存中のAIDS患者168および死亡者606を含む)が報告されている(2006年5月31日現在)。

2006年中に任意の病変報告(生存→死亡)により厚生労働省疾病対策課に報告された死亡例は日本国籍例22(男19、女3)、外国国籍例0、計22であった。

国籍・性別:HIV感染者では日本国籍男性が増加し続けており(図2-a)、2006年は787(2005年は709)とさらに増加した。一方、日本国籍女性も増加(32→49)、外国国籍男性・女性も微増した(図2-a)。AIDS患者では日本国籍男性が335(2005年は291)、日本国籍女性が20(2005年は11)と増加した(図2-b)。

感染経路と年齢分布:2006年は日本国籍男性の同性間性的接触(両性間性的接触を含む)による感染がHIV感染者では571(2005年は514)、AIDS患者では156(2005年は129)と、ともに過去最高を更新した(図3)。日本国籍男性の同性間性的接触によるHIV感染者は、15〜24歳では80%(図4-a)、25〜34歳では77%(図4-b)、35〜49歳では64%(図4-c)、50歳以上では38%を占めた(図4-d)。50歳以上は異性間性的接触による者の割合が30%と、他の年齢群に比べ大きいが(図4-d)、この年代でも同性間性的接触による者が異性間性的接触による者を上回った。一方、日本国籍女性のほとんどは異性間性的接触によるものであり、HIV感染者では25〜39歳が多かった(図4-b、c)。静注薬物濫用や母子感染によるものはHIV感染者、AIDS患者いずれも1%以下であり、諸外国に比べわが国は少ない。2006年には静注薬物濫用よる感染は7(HIV感染者4、AIDS患者3)、母子感染例は1(HIV感染者1、AIDS患者0)が報告された。

推定感染地域:2006年には国内での感染がHIV感染者の87%、AIDS患者の78%を占めた。2001年以降、外国国籍男性においても国外感染より国内感染の方が多くなっている。

報告地:診断した医師が届出をした都道府県別にみると、2006年のHIV感染者の報告数は、多い順に東京、大阪、愛知、神奈川、千葉、静岡、栃木、兵庫、福岡、京都、北海道、茨城、埼玉、長野、宮城、沖縄で、これら16都道府県が10を超えている(2005年は15都府県)。2006年のHIV感染者は北海道・東北、関東・甲信越(東京を除く)、東京、東海、近畿ブロックで、AIDS患者は北海道・東北、東京、東海、近畿、九州ブロックで増加している。

2.献血者のHIV抗体陽性率:2006年は献血件数4,987,857中87(男82、女5)の陽性者がみられ、献血10万件当たり 1.744(男2.572、女 0.278)と、2004年(1.681)を上回り過去最高であった(図5)。献血血液のHIV抗体陽性率対人口当たりのHIV感染率の比が西欧諸国に比べて非常に高い(IASR 21: 140- 141, 2000)という傾向には変わりがない。

3.保健所におけるHIV抗体検査と相談:自治体が実施する保健所等におけるHIV抗体検査実施件数は2005年100,287件→2006年116,550件とさらに増加した(図6)。同検査による陽性件数は440(0.38%)にのぼっているが、このうち保健所での検査93,497件中の陽性248件(0.265%)に対し、自治体が実施する保健所以外の検査23,063件中の陽性192件(0.883%)と、保健所以外での検査による陽性率が高い。相談受付件数も2005年161,474件→2006年173,651件と増加した(図6)。

まとめ:2006年のHIV/AIDS報告数は過去最高を更新した。特にHIV感染者の増加率が大きく、流行に歯止めがかかっていない。HIV感染者では2006年も男性での同性間性的接触による感染の増加が目立ち、年齢別では従来どおり20〜30代が多数を占めたが、2006年には30〜40代の大幅な増加がみられた。HIV感染者、AIDS患者ともこれまでの東京を中心とする関東地域に加え、近畿、東海ブロックなど地方大都市での増加傾向が続いている。今後の対策として、20〜40代、および男性の同性間性的接触による感染を中心としたHIV感染に対して、積極的な予防施策が必要である。

12月の世界エイズデーに加えて2006年から開始された6月のHIV検査普及週間に行われた啓発と利便性に配慮した検査体制の強化が検査・相談件数増加に結びついていることを示すデータも報告されているので(本号3ページ参照)、地域の実情に応じ、教育関係者、医療関係者、企業、NGO等との連携のもと、対象者を明確化してより積極的な普及啓発等を推進し、HIV感染の早期発見による早期治療と感染拡大の抑制に努める必要がある。

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