2007年3月の第3週(第11週)から、埼玉県や東京都を中心とした南関東で成人麻疹の流行がみられている。麻疹は一般的に小児の発疹性疾患とされているが、都内の大学での集団発生がみられ、休講する学校が相次いだ。川崎市においても6月1日現在で大学2校、高等学校1校および中学校1校において集団発生がみられ、休校等の措置が行われた。
川崎市の基幹定点において、成人麻疹の患者が初めて報告されたのは2007年3月の第3週(第11週)で、5月の第4週(第21週)までの報告患者総数は17名であった。そのうち16名が15〜29歳であった。
一方、検体検査については、当所に3月5日に初めて麻疹疑いの患者の咽頭ぬぐい液が搬入され、その後、5月の末までに19件の咽頭ぬぐい液が搬入された。患者の年齢は17〜30歳で、平均年齢は23歳であった。男女比は、男性15名、女性4名で、性別に有意な差がみられた。そのうち1名は東京都内の大学に通う学生で、集団発生が確認されている。その他の患者の感染経路は特定できず、いまのところ散発事例にとどまっている。搬入された検体はHA遺伝子を増幅するプライマーを用いたRT-PCRで目的遺伝子(349bp)の増幅を行い、RT-PCR陽性検体については、ダイレクトシークエンスにより塩基配列を決定し、国立遺伝学研究所のDNAデータベースであるDDBJのBLAST検索およびNJ法による分子系統樹解析を行い、遺伝子型を特定した。その結果、14検体でRT-PCR陽性となり、BLAST検索の結果、MVs/Toronto.CAN/20.96に類似し、遺伝子型D5に分類され、分離株間のホモロジーは99.4〜100%であった。また、ワクチン株であるEDMONSTON株とは97.7〜98.2%の一致率であった。
現在のところ、麻疹は関東から日本各地に波及しつつある。ワクチン未接種および罹患経験のない人には、ワクチン接種が必要であると思われる。
川崎市衛生研究所 平位芳江 清水英明 奥山恵子 岩瀬耕一 小川正之