2007年1月〜7月中旬までの佐賀県感染症発生動向調査におけるエンテロウイルスの検出状況について、その概況を報告する。
この期間の定点週別報告によると、ヘルパンギーナは第23週(6/4〜6/10)に定点当たり1.96人となり、第28週(7/9〜7/15)には6.00人と増加している。一方、手足口病の週別患者報告数は、第2週(1/8〜1/14)〜第20週(5/14〜5/20)まで定点当たり1.0人台の患者報告数であったが、第21週(5/21〜5/27)には2.13人を示し、第27週(7/2〜7/8)には5.09人とピークを迎え、これら患者数は例年に比べ多く、早い週から流行の兆しが見られた。
小児科定点医療機関でヘルパンギーナ、手足口病と診断された患者の臨床検体(鼻咽頭ぬぐい液)12件について、エンテロウイルスVP1領域のSeminested-PCRを行い、陽性検体の12件について遺伝子解析とBLAST検索を行った(表1、表2)。
遺伝子解析の結果、ヘルパンギーナの6件中4件がA群コクサッキーウイルス6型(CA6)、他にCA4とCA16の各1件であった。手足口病は6件中5件がCA6で、1件はCA16であった。
VP1領域の296bpについて塩基配列を決定し、相同性を比較した結果、CA6は9件中6件が100%一致し、3件は3〜5塩基の違いを示し相同性は98〜99%であった。CA16の2件は18塩基の違いを示し相同性は94%であった。
BLAST検索では、CA6の9件はすべて1278/CA6/Hyogo/1999[AB114111]に近縁で、相同性は93〜94%であった。CA16の2件中1件は1018T/VNM/05[AM292441]に近縁で相同性は98%を示し、1件はS22852/SAR/02[AM292457]に近縁で相同性は95%であった。CA4の1件はCA4/80290/Hiroshima.JP/04[AB188508]に近縁で相同性は88%であった。また、手足口病の1検体はCA6とライノウイルス89型との重複検出例であった。
なお、PCRで陽性であった12件中11件は188/222および189/222のプライマーセットにおいて良好な遺伝子解析結果が得られた。
今回、ヘルパンギーナおよび手足口病患者より検出したA群コクサッキーウイルスの12件中11件は佐賀県東部地区からの検出例であった。また、患者は0歳〜5歳の乳幼児に多いことから、乳幼児の保育施設などでの集団感染に注意する必要がある。
佐賀県衛生薬業センター
増本久人 平野敬之 坂本晃子 舩津丸貞幸 武田裕二 藤原義行