熊本県における手足口病患者からのエンテロウイルス71型検出状況

(Vol.28 p 264-264:2007年9月号)

本県では、2007年に入り一部の地域で手足口病の患者発生が見られていたが、第21週(5月21日〜27日)から徐々に県内各地の定点医療機関から患者発生が報告されてきた(定点医療機関からの患者報告数2.92)。第25週に入るとピークを迎え、患者報告数は7.98となった。

この期間に、4カ所の検査定点医療機関から手足口病患者由来検体として16検体(患者14名:咽頭ぬぐい液13検体、髄液2検体、直腸ぬぐい液1検体;髄液については手足口病から髄膜炎を起こしたと診断されたもの)が搬入され、細胞培養法(FL、CaCo-2、RD-18S、Vero細胞)によりウイルス分離を行った。その結果、ウイルスが7株分離され、中和法により同定した結果、エンテロウイルス71型(EV71)と同定された。無菌性髄膜炎と診断された患者検体では、咽頭ぬぐい液および直腸ぬぐい液検体からウイルスが分離されたが、髄液からは分離できなかった。ウイルスは、FL、CaCo-2、RD-18S細胞で2代〜3代にかけて分離され、FLおよびCaCo-2細胞の感受性が高かった。

なお、国立感染症研究所から分与されたEV71抗血清のうち抗BrCr血清では中和されたが、抗C7血清では中和されなかった。

患者の臨床症状は、発疹は水疱等が主症状で全員にみられたが、口内炎の症状がみられた者は64%であった。発熱については平熱の者が43%であった(表1)。

本県では、昨年も手足口病患者の検体からEV71が18検体中10検体から分離されている。また、本年3月にはA群コクサッキ−ウイルス16型も分離されたが、本年も手足口病の流行はEV71によるものと考えられた。

熊本県保健環境科学研究所微生物科学部 松尾 繁 原田誠也 中島龍一

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