2006/07シーズンのノロウイルス食中毒事例の疫学的特徴

(Vol.28 p 282-283:2007年10月号)

2006/07シーズンのノロウイルス(NV)食中毒事例の疫学的特徴について、食中毒統計を基にとりまとめた。なお、各流行期は7月〜翌年6月までとし、2002〜2005年のデータは確定値、2006年、2007年のデータは2007年9月14日現在の速報値を用いた。また、原因食品は記載内容に基づき大まかに分類したため、必ずしも分類が適切でない場合がある。

食中毒事例数および患者数
2002/03〜2005/06の4流行期当たりの事例数は259〜288事例(平均272)で、ほぼ横ばいで推移していたが、2006/07シーズンは過去4シーズン平均の約1.7倍の474事例が報告された。同期間の患者数をみると、過去4シーズンは9,767人〜11,265人(平均10,517人)であったが、2006/07シーズンは約2.7倍の28,271人であった。月別の事例数・患者数をみると、11月124件・6,220人、12月150件・11,547人で、両月で同シーズンの事例数の58%(274事例)、患者数では63%(17,767人)を占めた(図1)。年明け以降では事例数はほぼ例年並み、患者数も1月を除きほぼ例年並みで推移している。

施設別発生状況
過去4シーズンの施設別発生状況は、飲食店が157件(平均値)で61%を占め、以下、旅館35件(14%)、事業所、仕出屋各14件(5%)、学校7件(3%)が主な施設であった。2006/07シーズンは飲食店 273件(58%)、旅館81件(17%)、仕出屋59件(12%)、事業所22件(5%)、病院12件(3%)、学校11件(2%)であった。各施設の発生状況を過去4シーズンと比較すると、飲食店、旅館、仕出屋、事業所、病院、学校、製造所、販売所で発生数は増加したが、特に仕出屋、病院での増加が顕著であった。

原因食品
474事例について原因食品を大まかに分類し、原因食品が特定された事例と不明とされた事例に区分しに示した。行政的に原因食品不明とされた事例についても原因として疑われた食品が記載されている場合は同様に分類した。原因食品特定事例の多くは、疫学的調査等から原因食品と断定されたもので、食品からウイルスが検出された事例は極めて少ないと考えられる。最も多く記載されていたものは「(飲食店、旅館等の)施設提供食品」で154件(33%)を占めたほか、弁当、会席料理、宴会料理、会食料理等の複合食品が多数を占めた。例年と比較して、弁当・仕出弁当が多い傾向がうかがえる。カキ事例は11件であった。複合食品、カキ以外では、寿司、パン・サンドイッチ、刺身などの調理工程において調理従事者の手指の接触の可能性がある食品が複数事例報告されており、注目される。事例の多くは調理あるいは配膳過程における食品取扱者からの直接的、間接的な二次汚染が原因と思われる。

事例当たり患者数 (図2
1事例当たりの患者数は平均60人で、それまでの約1.5倍であった。このことから、2006/07シーズンは事例数の増加とともに、事例当たりの患者数も増加し、食中毒事例の大規模化傾向が認められた。1事例当たり最大の患者数は1,734人であった。

以上、2006/07シーズンのノロウイルス食中毒事例の特徴についてとりまとめた。感染症発生動向調査に基づく「感染性胃腸炎」の多発時期と一致し、11月、12月に食中毒事例が多発していることから、食品取扱施設に対する感染性胃腸炎の発生動向に関する情報提供が重要である。また、に示すように、様々な食品がノロウイルス食中毒の原因になっており、その多くは食品取扱者からの食品の二次汚染が原因と考えられることから、食品取扱施設の一般的衛生管理、ノロウイルスの調理施設内への持ち込み防止対策、手洗いの指導などの徹底が必要である。

国立医薬品食品衛生研究所食品衛生管理部  野田 衛

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