ロタウイルスワクチン

(Vol.28 p 302-302:2007年10月号)

ロタウイルスは世界中において乳幼児の重症下痢症を引き起こす最も一般的な病原体である。2004年に開発途上国でのロタウイルス感染症による死亡者は約52万7千人と推定されている。感染経路は糞口感染で、3歳までにほとんどの者が罹患しており、途上国では感染者の多くは1歳未満である。1999年、米国で認可されたロタウイルスワクチンは、腸重積発生との関連が疑われ、1年を経過せず市場から回収された。現在2つの新しい経口生ワクチン(Rotarix ™とRotaTeq ™)が2006年に認可されている。一般にロタウイルスワクチンは、重症ロタウイルス疾患に対して90〜100%、また、ロタウイルス下痢症に対しては74〜85%の予防効果がある。この2つのワクチンは先進西側諸国とラテンアメリカにおける大規模臨床試験において高い有効性と安全性が確認された。現在のところ、認可流通後の安全性調査においてもワクチン接種グループでの腸重積のリスク増加は認められていない。現在、多くの国でロタウイルスワクチンが導入されている。

これまで、ロタウイルスワクチンの臨床的効果が確認されてきた米国、ヨーロッパ、およびラテンアメリカなどの地域で、WHOはロタウイルスワクチンをその地域の予防接種プログラムに含めることを強く推奨している。しかし、現在のロタウイルスワクチンの効果は他の地域で実証されていないため、特にアジア、アフリカでその効果が確立されるまで、WHOはロタウイルスワクチンの全世界的推奨を控えている。

ワクチンの必要性やワクチンによる疾患減少を議論する上で、定点把握によるロタウイルス疾患のサーベイランスとモニタリングが必要である。また、対象年齢群のワクチン関連腸重積のリスクを把握するために新しいロタウイルスワクチンの認可流通後の安全性調査が必要である。

(WHO, WER, 82, No.32, 285-296, 2007)

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