<速報> 大分県の麻疹の流行状況

(Vol. 28 p. 324-324: 2007年11月号)

1.患者の発生状況
麻疹は2005年に過去最低の患者報告数となったが、その後2006年、2007年と患者報告数は微増傾向にある。2007年の感染症発生動向調査の定点報告(小児科定点36、基幹定点11)では、麻疹が2月および5月〜8月にかけて、12名報告された(表1)。成人麻疹は5年ぶりの報告で、5月〜8月にかけて5名報告された。大分県の麻疹の発生時期は通常3月下旬〜7月上旬にかけてであるが、本年の流行は8月まで続き、例年より遅い流行であった。

大分県は、2007(平成19)年5月28日から大分県医師会の協力を得て、県内の医療機関を対象に「麻疹発生全数調査」を開始した。これは、カタル症状、発熱、コプリック斑、発疹などの臨床症状から麻疹を疑われる患者を、医療機関が患者の同意を得た上、県民保健福祉センターや保健所へ報告するシステムである。また、診断が不確実な場合は、保健所を通じて県衛生環境研究センターで検査を実施することとなっている。

9月末現在までに51名の患者の報告があった。この中には感染症発生動向調査の届出患者も含まれる。年齢別では、14歳以下が18名、15〜19歳が15名、20代が12名、30代が3名、40代が1名、50代が2名であった。ワクチン接種歴がある人は15名であった。報告後に他の疾患と診断された事例もあるが、全数報告は定点報告の約3倍の報告数であり、麻疹の流行の実態がより正確に把握できたと思われる。例えば、県外からの学生の帰省中、もしくは県外から県内へ出張中や合宿中に発症した事例や、家族内で感染した事例などが報告された。また、保健所等や医療機関が感染拡大防止策を講じることができるなどの効果もあった。

2.ウイルスの検出状況
全数調査の医療機関から20件、感染症発生動向調査の定点から1件の検査依頼があった。このうちPCR検査で陽性であった検体は11件、Vero/hSLAM細胞を用いた分離で陽性であった検体は6件であった。分離はいずれも細胞1代で陽性となった。細胞で麻疹ウイルスが分離された検体は、いずれもPCR検査でもウイルス遺伝子が検出された。ウイルスの遺伝子型はすべてD5型であった。

3.まとめ
今シーズンの流行は終息に向かいつつあると思われるが、全国の発生状況をみると、今後も注意深い観察が必要である。近年、麻疹患者は急速に減少しつつあり、麻疹の撲滅は目前となっている。今後も行政と医療機関が協力して、ワクチン接種の強化とともに麻疹の全数調査を継続し、麻疹の排除を目指したい。

大分県衛生環境研究センター 小河正雄 長岡健朗 吉用省三 渕 祐一
大分県健康対策課 辛嶌淳子

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