長野県における感染症発生動向調査事業の2007年1月〜10月末までのヘルパンギーナ患者および手足口病患者の発生動向およびエンテロウイルス検出状況を報告する。
ヘルパンギーナ
2007年における長野県でのヘルパンギーナの週別患者報告数は、第1週を初発とし、第27週(7/2〜7/8)に定点当たり1.0人を超え、第31週(7/30〜8/5)に5.16人と第1ピークを迎えた。その後減少したが、再度増加し、第36週(9/3〜9/9)にも3.84人と第2ピークとなり、二峰性を示した(図1)。
2007年1月〜10月末までに、長野県内の病原体定点医療機関で採取されたヘルパンギーナ患者の咽頭ぬぐい液26件について調査した結果、全26検体からウイルスを検出した。ウイルスの分離は、RD-18S、Vero9013、Vero、およびHEp-2細胞を用いて、1〜3代まで継代培養して行った。同定は、国立感染症研究所から分与された抗血清を用いての中和試験、および哺乳マウスによるCF試験を実施した。分離されたウイルスは、A群コクサッキーウイルス(CA)5型が11株、CA6が9株、CA10が3株、CA4が1株、CA16が1株、および単純ヒトヘルペスウイルス1型(HSV-1)が1株であった(表1)。この結果から、今シーズンのヘルパンギーナ流行の主因ウイルスはCA5およびCA6と推測された。長野県でもヘルパンギーナ患者から検出されたウイルスは毎年変化しており、過去の年別による主な分離ウイルスをみると、2007年に主因ウイルスとなったCA5およびCA6は2005年にも多数検出され、2年ぶりの流行であると考えられる。
手足口病
2007年における長野県の手足口病の週別患者報告数は、全国よりも少し遅れて増加し、第28週(7/9〜7/15)に定点当たり1.0人を超え、第31週(7/30〜8/5)に2.53人と第1ピークを迎えた。その後一時減少したが、第36週(9/3〜9/9)に1.87人に増加し、第2ピークとなり、二峰性を示した(図2)。
2007年1月〜10月末までに、病原体定点医療機関で採取された手足口病患者の咽頭ぬぐい液24件について調査したところ、15件からウイルスが検出された。上記の培養細胞を用いて継代培養しウイルス分離を実施し、同定には抗血清を用いての中和試験を行った。また、必要に応じて培養液上清を用いて、VP4-VP2領域の650bpを増幅するEVP4およびOL68-1プライマーによるRT-PCRを試み、さらにVP4-VP2領域の208bpを増幅するEV71プライマーペアによるNested-PCRを実施して確認した。その結果、CA16が12株、エンテロウイルス(EV)71型が3株、CA6が1株同定された。このうち、EV71とCA16の重複感染が1件認められた。長野県では2006年にEV71が94%(15/16株)と高率に分離されたので、その後の動向に注目していたが、今シーズンの主因ウイルスはCA16によるものと推測された(表1)。病原微生物検出情報(IASR、2007年10月31日)により、全国で分離されたウイルス検出状況と比較したところ、2007年は全国的にもCA16の検出が多いことから、これと同様の傾向であると考えられる。
長野県環境保全研究所保健衛生部感染症班
宮澤衣鶴 畔上由佳 粕尾しず子 吉田徹也 小林正人 白石 崇