アデノウイルスの14型(Ad14)はまれであるが、すべての年齢群で致死的な呼吸器疾患を引き起こすことがある新興の血清型株である。ニューヨーク、オレゴン、ワシントン、テキサスの4州で患者の発生があった。2006年5月にニューヨーク州で生後12日の新生児がAd14の呼吸器感染で死亡した。さらに2007年3〜6月までの間で、オレゴン州、ワシントン州、テキサス州の患者群において合計 140症例のAd14による呼吸器疾患が確認された。これらの患者のうち、53人(38%)が入院し、うち24人(17%)は集中治療室(ICU)入院、9人(5%)が死亡した。4州のAd14分離株はヘキソン遺伝子とファイバー遺伝子の塩基配列データはすべて同一であるが、1955年のAd14の標準株とは異なり、米国内で新しいAd14が拡大していることが示されている。ニューヨークの症例と他の事例との疫学的な関連性は確認されていない。本報告は州と地域の保健当局、米国空軍およびCDCによる調査報告であり、各州担当部局へAd14の集団発生の可能性について警告をするものである。
ニューヨーク州:2006年5月、満期産で特に異常なく出生した生後12日の女児がベッド上で死んでいるのが発見された。剖検が実施され、気道および胃のスワブからPCR でアデノウイルスが検出された。またウイルスが分離され、中和法でAd14と型別された。また病理組織学的にも呼吸器の病変が認められたことからAd14で死亡したものと特定された。ニューヨーク市衛生部はこの症例以外のAd14症例を確認していない。
オレゴン州:2007年3月3日〜4月6日にかけて、ある病院で重症肺炎の複数の患者が発生し、CDCにより、17検体中15件の分離株がAd14と同定された。同州保健局により2006年11月1日〜2007年4月30日にかけてアデノウイルスが陽性であった68人のうち50人の分離株が型同定され、31人がAd14であった。1人を除く30人の患者の年齢中央値は53.4歳であった。22人の患者(73%)が入院、16人(53%)は集中治療が必要で、7人(23%)は重症肺炎で死亡していた。病院あるいは地域での患者間のAd14伝播を示すつながりは確認されていない。
ワシントン州:住居型看護施設の住民4人が原因不明の肺炎で入院した。患者らは2007年4月22日〜5月8日の間に咳嗽、発熱、あるいは息切れが認められ、3人が重症肺炎で集中治療と人工呼吸が必要であった。AIDSの状態であった患者1人が死亡し、4人全員が同州保健部によりアデノウイルス陽性、入手が可能であった3株の分離株がAd14と同定されている。
テキサス州:2007年2月以降、ラックランド空軍基地の軍事訓練生に、アデノウイルス感染症と関連した有熱性の呼吸器感染症の集団発生があり、423件の呼吸器検体から268件(63%)でアデノウイルス陽性、このうち118件(44%)で血清型が調べられ、106件(90%)がAd14であった。2007年2月3日〜6月23日にかけて27人が肺炎で入院し、5人はICUに入院、1人のICU患者が人工呼吸管理となり最終的に死亡した。調査以降も、有熱性の呼吸器疾患の新規症例が続き、2007年9月23〜29日の週の発症者は55人、さらに、2007年3〜9月にかけて空軍基地から実習生を受け入れたテキサス州の他の軍事基地3カ所もAd14疾患合計220症例を報告している。
MMWR編集者注:アデノウイルスは、新生児、高齢者および基礎疾患を持つ患者に重症疾患を起こすことがある。しかし一般的には、健康な成人には生命にかかわるウイルスではない。このレポートに記載されている症例は、新しい強毒Ad14変異株の出現および米国内での広がりを示唆しているため、通常のことではない。
アデノウイルスは呼吸器分泌液および糞便中に排泄され、数週間にわたって環境中の表面で生き残るため、アデノウイルス流行のコントロールは難しい。
Ad14の自然史、重症Ad14疾患の危険因子、および効果的にAd14の伝播を防ぐ方法に関するさらなる研究が必要である。
IASR編集委員会注:日本国内では病原微生物検出情報で、過去27年間に2株しかAd14が分離同定されておらず、この間の流行はなかったことが示唆される。日本国内に米国で報告されたAd14が侵入した場合、その流行と重症患者の多発が懸念され、国内でのAd14を含むアデノウイルス流行のサーベイランスを強化するべきである。
(CDC, MMWR, 56, No.45, 1181-1184, 2007)