京都市では2007年11月(第46週)に採取された咽頭ぬぐい液から、今シーズン初めてインフルエンザウイルスB型を分離した。
京都市でのインフルエンザの定点当たり報告数は、第45週(11/5〜11/11)が0.03、第46週(11/12〜11/18)は0.10と増加傾向にある。全国でも同様に第45週が0.50で、第46週は0.94と大きく増加している(図1)。
当該患者は62歳の男性、症状は典型的なインフルエンザ症状で、発熱(38℃)、上気道炎、関節痛・筋肉痛を呈していた。
検体は、感染症発生動向調査事業の病原体定点の医療機関において、発病日の翌日(11/14)に採取され、京都市衛生公害研究所に搬入された。5%ウシ血清アルブミン(BPA)で処理し、マイクロフィルターに通したものを検液とし、培養細胞(FL、RD-18S、Vero、MDCK)および,哺乳マウスに接種した。MDCK細胞で2代継代後6日目にCPE(細胞変性効果)が現われ、ウイルスが分離できた。なお、他の細胞および、哺乳マウスではウイルスは分離できなかった。また、インフルエンザ迅速キット「エスプラインインフルエンザA&B-N」(富士レビオ社)では、B型に明瞭な青色のラインを認めた。
分離したウイルスは、国立感染症研究所から配布された2007/08シーズン用同定キットを用い、赤血球凝集抑制(HI)試験(0.6%モルモット血球を使用)により同定した。その結果、山形系統の抗B/Shanghai(上海)/361/2002(ホモ価640)に対して、HI価は160、その他の抗A/Solomon Islands/3/2006(ホモ価320)、抗A/Hiroshima(広島)/52/2005(ホモ価640)および、抗B/Malaysia/2506/2004(ホモ価640)に対してはいずれも<10であり、B型(山形系統)と同定できた。また、検液および、MDCK細胞培養上清でZhangらがヘマグルチニン(HA)領域に設計したPrimer対を用いて、マルチプレックスRT-PCRおよびnested-PCR(AH1:944bp,AH3:591bp,B:767bp)を行ったところ、約767bpのバンドが確認でき、PCRでもB型と同定できた(図2)。
京都市でのインフルエンザウイルスB型の分離状況は、2006/07シーズンに5株分離しているが、いずれも全国と同様Victoria系統であった(図1)。今回分離した株は山形系統で、2004/05シーズンの5株以来、3シーズンぶりの分離であった。平成19年度(2007/08シーズン)のインフルエンザ混合ワクチンでのB型は、B/Malaysia/2506/2004(Victoria系統)が用いられているが、諸外国での流行は、Victoria系統から山形系統へ移行している傾向があるため[WHO, WER 82(40): 351-356, 2007、抄訳はIASR 28(11): 327-328, 2007参照]、今後、インフルエンザ発生動向に注意が必要と考える。
京都市衛生公害研究所微生物部門
近野真由美 松尾高行 梅垣康弘 竹上修平