海外渡航者から入国時に分離されたインフルエンザウイルスの解析
(Vol. 29 p. 16-17: 2008年1月号)

2007年3月〜5月にかけて中部国際空港(セントレア)において入国時に採取した検体から11株のインフルエンザウイルスを分離した。

入国時にインフルエンザ様症状を訴えて診察を受けた患者から、同意を得て採取した咽頭ぬぐい液検体14件を、定法に従いMDCK細胞に接種したところ、に示す11人の11検体からインフルエンザウイルスが分離された。分離ウイルスの型別は、国立感染症研究所より2006/07シーズン用に配布された検査キットおよび0.75%モルモット赤血球を用いた赤血球凝集抑制(HI)試験により決定した。11株中9株はAH3亜型インフルエンザウイルス、2株はB型インフルエンザウイルス(Victoria系統)であった。

これら11株についてHA1遺伝子領域の塩基配列を決定し、推定アミノ酸配列を解析した。 B型ウイルス2株は、2006年に新たにワクチン株に選定されたB/Malaysia/2506/2004とは2カ所のアミノ酸が異なっており、この変異は2006/07シーズンに愛知県内で分離されたB型株にも認められた。一方、AH3ウイルス9株については、2006/07シーズンワクチン株のA/Hiroshima(広島)/52/2005と比較したところ、複数のアミノ酸置換変異が認められた()。(1) 9株中6株にはG50EおよびK140I変異が認められた。(2) 残り3株中1株にはN144D変異が、1株にはR142GおよびN144D変異が認められた。(3) A/Aichi(愛知)/72/2007にはR142Gに加えてさらにL157SおよびK173E変異もみられたが、患者の渡航先タイでの流行株にもL157SおよびK173E変異が報告されている (Influenza Virus Resource, http://www.ncbi.nlm.nih.gov/genomes/FLU/FLU.html)。なお、2007年4〜5月に愛知県内で分離したAH3株2株中2株にR142GおよびN144D変異を検出した。

今回解析した入国者から分離されたAH3亜型株に多く見られたG50E/K140I変異は、南半球における2008シーズンのワクチン推奨株A/Brisbane/10/2007にみられている変異である。A/Brisbane/10/2007類似ウイルスの国内における今後の動向が注目される。

愛知県と名古屋検疫所では1996年から継続して入国者からのインフルエンザウイルス分離を試みている。海外から本県に持ち込まれるインフルエンザウイルスの動向を把握するには、今後も継続的調査が必要である。

愛知県衛生研究所 秦 眞美 田中正大 皆川洋子
厚生労働省名古屋検疫所中部空港検疫所支所
熊谷則道 野田 学 一戸邦彦 橋本迪子

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