2007年7月、米国テキサス州とインディアナ州において1件ずつ(それぞれ患者2人)のボツリヌス食中毒が発生した1)。テキサス州の症例は小児の同胞(性別不明)で、症状からボツリヌス症と診断された。血清および便はボツリヌス毒素陰性で、便はボツリヌス菌培養陰性であった。人工呼吸器による呼吸管理とボツリヌス抗毒素の投与が行われ、7月30日現在1人はリハビリに移行したが、もう一人は依然呼吸管理中である。2人にはキャッスルベリーズ社(ジョージア州)の缶詰ホットドッグチリソースの喫食歴があった。喫食された缶は残っていなかったが、同じ日に購入された未開封の缶を調べたところ、ボツリヌス毒素は検出されなかった。
一方、インディアナ州の症例は夫婦で、やはり症状からボツリヌス症と診断され、二人の血清からマウス法でボツリヌス毒素が検出された。夫の血清の詳しい検査により毒素はA型と判明した。冷蔵庫に残されたチリソースからマウス法でA型ボツリヌス毒素が検出され、キャッスルベリーズ社のチリソースの空き缶および他社のチリソースの空き缶がごみ箱から発見された。
CDCのOutbreakNetでは、キャッスルベリーズ社のチリソースが共通食品と強く疑われることからFDA(米国食品医薬品局)に情報提供を行った。またFDAおよびFSIS(農務省食品安全検査局)による缶詰工場の調査から、工程に欠陥があることが判明した。FDAによる検査では17個の膨らんだ缶のうち16個からA型ボツリヌス毒素をELISAとマウス法で検出したが、これらはテキサスとインディアナでの症例での缶と同時にレトルト処理されたものであった。
FDAおよびFSISは消費者に対し警告を発し、製造元であるキャッスルベリーズ社は自主回収の対象を段階的に拡げ、最終的に食品25ブランド87品目、ドッグフード1ブランド4品目の計91品目が自主回収の対象となった2)。さらにカリフォルニア州においても同社の缶詰との関係が疑われるボツリヌス食中毒1件(患者1人)が発生している。
参 考
1) Ginsberg MM, et al ., MMWR 56(30): 767-769, 2007
2) http://www.castleberrys.com/news_productrecall.asp
国立感染症研究所細菌第二部 岩城正昭