リフトバレー熱fact sheet(2007年9月改訂)
(Vol. 29 p. 54-55: 2008年2月号)

リフトバレー熱(RVF)は、ウイルス性の動物由来感染症であり、感染によりヒトと動物の両方に重篤な疾患を引き起こす可能性がある。家畜の間での感染は多くの経済的損失を生じる。RVF ウイルスはブニヤウイルス科フレボウイルス属に属し、1931年にケニアのリフトバレーで初めて発見された。それ以来サハラ以南アフリカや北アフリカでの発生が報告されている。1997〜98年にはケニア、ソマリア、タンザニアで大きな発生があり、2006〜07年にも同3国で、さらに2007年にはスーダンでの発生が報告された。また、2000年に、サウジアラビア、イエメンでもRVF患者が確認され、アジア、ヨーロッパへの広がりも懸念されている。

ヒトへの主な伝播経路は、感染動物の血液あるいは臓器への直接および間接接触である。そのため、遊牧民、農民、食肉処理場で働く者、獣医などは感染のリスクが高い。また、蚊の媒介によっても感染が起こる。ヒト−ヒト感染は確認されていない。

ヒトでの潜伏期間は2〜6日で、無症状のこともあるが、軽症のものでは、インフルエンザ様症状、筋肉痛、関節痛、頭痛などの発熱性の症状が特徴的である。症例によっては項部硬直、羞明、嘔吐などを呈する場合もあり、髄膜炎と誤診されることがある。症状が4〜7日続き、その後免疫が誘導され、ウイルスは血中から徐々に消失する。ほとんどの場合、比較的軽症であるが、数パーセントの症例では重篤になり、これらの症例では眼疾患(0.5〜2%)、髄膜脳炎(1%)、出血熱(1%未満)の特徴的な3症状のうちの1つ以上が認められることが多い。致死率は1%未満である。診断は、ELISAやEIAによるIgM抗体の検出、病初期の血液、あるいは死亡後の組織からのウイルス検出でなされ、ウイルスの検出方法としてはウイルス分離、抗原検出、RT-PCR法などがある。多くの患者は軽症で特異的治療は必要とされず、重篤な患者では一般的な支持療法が行われる。ヒトに対する不活化ワクチンが開発されているが、未認可で市販されていない。

RVFウイルスは様々な種類の動物に感染し得る。羊は牛やラクダより感染しやすい。また、重篤になりやすい要因として年齢は重要で、子羊の場合は90%以上が死亡するが、成獣の羊の場合致死率は10%程度である。ウイルスを媒介し得る蚊が数種類あり、動物間では蚊によって感染が広がる。動物におけるRVFのコントロールには、生ワクチンと不活化ワクチンが利用されている。動物へのワクチンは集団発生が起こる前に実施されるべきで、なぜなら集団発生後に実施された場合、1本で複数回分が入ったバイアルの使用や、針、注射器の再利用を通してウイルスが伝播する可能性があるからである。

ヒトにおける感染予防として、動物との接触では手袋やその他の適切な防護衣を使用し、感染地域での動物性食品は必ず加熱すること、そして蚊による媒介を減らすことがあげられる。また、ヒトーヒト感染はこれまで報告されていないが、理論的には感染者の血液や組織を介して医療従事者が感染するリスクがあるので、医療従事者は感染患者のケアの際は標準予防策を行うべきである。検査診断技術者もリスクがあるので、感染が疑われている検体を扱う際には訓練を受けた者が、適切な装備を備えた検査室で扱う。ベクターコントロールについては、繁殖場所が明確でその範囲が広くない場合は、蚊の幼虫駆除がもっとも効果的な方法である。

(WHO, WER, 83, No.2, 17-22, 2008)

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