秋田県におけるA群溶血性レンサ球菌T型の流行状況
(Vol. 29 p. 78-79: 2008年3月号)

A群溶血性レンサ球菌(A群溶レン菌)による感染症は、例年、冬季および春〜初夏にかけて流行のピークを迎える。感染症情報センターの報告によると、近年、この疾患の報告数が増加する傾向にあり、秋田県においてもT型別のために当センターに送付された菌株数が、2005年 315株、2006年 476株、2007年 540株と増加している。そこで、秋田県北部、県中央部および県南部にそれぞれ位置している主要な3カ所の定点病院において、2006年1月〜2007年12月に分離されたA群溶レン菌T型の流行状況について報告する。

2006年および2007年の秋田県北部、県中央部および県南部におけるA群溶レン菌のT型別状況を図1に示した。県北部で分離頻度の高いT型は、T1、T12およびT28で、順位の変動はあるが、2006年と2007年で共通している。県中央部では、T1およびT12が2006年と2007年で共通して分離率が高かった。2007年にはT28が主要菌型の1つとなっているが、分離株数はいずれの年も4株で、増加は認められなかった。県南部は、他の2地域とは明らかに異なる傾向を示し、2006年にはTB3264、2007年にはT6が高い分離率を示した。

T1、T6、T12、T28およびTB3264の2006年1月〜2007年12月までの月別分離株数の推移を図2に示した。T1は県北部と県中央部において特徴的に分離され、2006年に県中央部で、2007年には県北部でA群溶レン菌感染症の流行時期にあわせて、分離株数も増加した。T6は県南部において、2006年11月以降急速に分離数が増加し、2007年4月をピークに、2007年で全体の約40%にあたる158株が分離された。2007年にT6が分離された患者の平均年齢は7.9歳で、定点病院周辺の比較的限局された地域において小児を中心に大きな流行があったことが推察される。この間、他の2地域ではほとんどT6は分離されていない。T12は各地域共通に分離が確認され、A群溶レン菌感染症の流行時期にあわせて各地域での分離株数も増加した。T28は県北部で特に多く分離されたT型であるが、2007年初夏の流行以降、この地域での流行の兆しはみられていない。しかしながら、県南部で2007年10月以降分離株数が増加傾向にあり、今後注意が必要である。TB3264は県南部で特徴的に分離され、この地域では2006年、2007年ともに年間を通じて分離が確認されていた。

以上の成績から、秋田県内では定点病院が位置する地域ごとに、特徴的なT型の流行があることが示された。特に、県南部では2006年11月以降T6によるA群溶レン菌感染症の局地的流行があったことが推察された。秋田県におけるT6の流行は、1997年県北部での流行以来、10年ぶりとなる(IASR 20: 37, 1999)。

秋田県健康環境センター保健衛生部微生物班
今野貴之 八柳 潤 齊藤志保子 山脇徳美

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