日本のAIDS患者・HIV感染者の状況
  (平成19年10月1日〜12月30日)

(Vol.28 p 81-83:2008年3月号)
厚生労働省健康局疾病対策課
平成20年2月12日
エイズ動向委員会委員長コメント(要旨)

【平成19年第3四半期】
1.今回の報告期間は2007(平成19)年10月1日〜2007(平成19)年12月30日までの約3カ月である。

法定報告に基づく新規HIV感染者報告数は277件(うち男性264件、女性13件。前回報告274件、前年同時期235件)で、過去最高である。

一方、新規AIDS患者報告数は95件(うち男性84件、女性11件。前回報告114件、前年同時期85件)で過去8位である。

2.感染経路別に見ると、新規HIV感染者では同性間性的接触によるものが193件(全HIV感染者報告数の約70%)と最も多く、そのうち181件が日本国籍男性であった。

また、異性間性的接触による新規感染者報告数は57件(全HIV感染者報告数の約21%、うち男性47件、女性10件)である。

一方、新規AIDS患者では同性間性的接触によるものが37件(全AIDS患者報告数の約39%)、異性間性的接触によるものが38件(全AIDS患者報告数の約40%、うち男性28件、女性10件)である。

年齢別では、新規HIV感染者は20〜30代が多数(約68%)を占め、新規AIDS患者は30〜50代と広く分布している。

要約すると、感染者・患者とも88%以上を男性が占め、その中でも同性間性的接触による感染が約62%を占めている。

3.2007(平成19)年10月〜12月末までの保健所におけるHIV抗体検査件数は38,194件、自治体が実施する保健所以外の検査件数は6,679件、保健所等における相談件数は59,491件となっており、いずれも前年同時期より大幅に増加した。

4.新規HIV感染者報告数を感染経路別に見ると、男性同性間性的接触は依然半数を超えている。年齢別では、20〜40代にHIV感染が広がっているものの、20代男性が増加した。また、検査・相談件数の増加については、HIV検査普及週間前後以降も増加した前回報告より、また、前年の第4四半期よりも増加した。

これらのことを合わせて考えると、利用者の利便性に配慮した検査・相談事業による検査体制の整備について一定の成果が認められる。

一方で、検査・相談件数が減少に転じている自治体もあり、今後も全国的に検査・相談件数の増加傾向が持続するのか注視していく必要がある。

【2007(平成19)年年間報告(速報値)】
◇第109回〜第112回動向委員会への報告数(平成19年1月1日〜平成19年12月30日)を集計して、2007(平成19)年1年間を通しての数値を速報値として報告する。

5.2007(平成19)年1年間の新規HIV感染者報告数(速報値)は初めて1,000件を超え1,048件、新規AIDS患者報告数は400件であった。その合計は1,448件(一日あたり約4.0件)であり、昨年までの速報値および確定値と比較して過去最高を記録した。

※速報値の最高は、2006(平成18)年のHIV感染者914件、2006(平成18)年のAIDS患者390件。合計は2006(平成18)年の1,304件。

※確定値の最高は、2006(平成18)年のHIV感染者952件、平成18年のAIDS患者406件。合計は2006(平成18)年の1,358件。

6.2007(平成19)年1年間の保健所等におけるHIV抗体検査件数(確定値)は、153,816件(前年同時期116,550件)で、前年を大幅に上回り、これまでの過去最高であった1992(平成4)年よりも約2万件上回った。相談件数は214,347件(前年同時期173,651件)であった。

7.2007(平成19)年1年間の献血件数(速報値)は4,939,548件(昨年4,987,857件)で、そのうちHIV抗体・核酸増幅検査陽性件数は102件(昨年87件)と初めて100件を超えた。10万件当たりの陽性件数は2.065件(昨年1.744件)で、前年より増加した。

8.新規HIV感染者報告数を感染経路別に見ると、男性同性間性的接触は依然半数を超えている。また年齢別では、20〜40代にHIV感染が広がっているものの、前年と比べて30代以上の増加傾向、なかでも40代の大幅な増加を認めた。

これに対して、検査・相談件数が、2006(平成18)年に創設されたHIV検査普及週間および世界エイズデー期間前後と連動して大きく伸びており、その傾向が2つのキャンペーン期間以降も維持されていることを合わせて考えると、利用者の利便性に配慮した検査・相談事業による検査体制の整備について一定の成果が認められる。一方で、検査・相談件数が減少に転じている自治体もあり、今後も全国的に検査・相談件数の増加傾向が持続するのか注視していく必要がある。

【総 括】
各自治体においては保健所等を中心に、さらに利用者の利便性(夜間・休日・迅速検査)に配慮した検査・相談事業を推進し、予防に関する普及啓発に努めることが重要であり、HIV感染の早期発見による適切な治療の促進と感染拡大の抑制に努める必要がある。検査件数の増加に伴いHIV感染者の報告が増加していることから、地域の実情に応じて告知後の支援・相談および医療提供体制のさらなる充実を図ることが急務である。

また、国民はHIV・AIDSについての理解を深め、身近な問題として積極的に予防に努めるべきである。早期発見は、個人においては早期治療、社会においては感染の拡大防止に結びつくので、HIV抗体検査・相談の機会を積極的に利用していただきたい。

今月の表紙へ戻る


IASRのホームページに戻る
Return to the IASR HomePage(English)



ホームへ戻る