L細胞にポリオウイルス(PV)レセプターが導入され、PVに対する高感受性を付与されたL20B細胞は、PV以外のエンテロウイルスやアデノウイルス(Ad)に対しても感受性があることが知られている。そこで、ウイルス調査における本細胞の有用性を検討するために、感染症発生動向調査で便から分離したAd2 2株について、L20B細胞とHEp-2、RD-18SおよびA549細胞間で、その感受性を比較した。
HEp-2細胞で分離増殖させたウイルス液を2%FBS-DMEMで10倍段階希釈し、96ウェルプレートを用いてTCID50/50μlを測定した。細胞は2日間で単層になる濃度に調製し、希釈したウイルス液に添加して、35℃炭酸ガス孵卵器中で培養した。毎日細胞を観察し(図1、図2、図3、図4)、最終判定は7日後に行った。供試したAd2では、すべての細胞において、2株とも明確なCPEが観察された。CPEを呈するまでの時間は、L20B細胞でも他の細胞と変わらず、ウイルスを接種した翌日にはCPEが観察された。
Karberの式によるTCID50を表1に示した。Ad2のTCID50は、HEp-2ではおおむね106、A549では105、RD-18Sでは104と高い感受性を示したが、L20Bでは両ウイルスともに 3.1×10と低かった。L20B細胞では、アデノウイルスの力価は10倍程度にしか上がらず、この感受性の差からポリオウイルスとの鑑別も可能であると思われる。
兵庫県健康環境科学研究センター 榎本美貴 近平雅嗣
国立感染症研究所感染症情報センター 藤本嗣人