これは、北半球の次季インフルエンザシーズン(2008年11月〜2009年4月)におけるワクチン株についての推奨である。南半球に対する推奨は2008年9月に行う予定である。
2007年9月〜2008年1月のインフルエンザの活動性
この期間のインフルエンザの活動性は、アフリカ、南北アメリカ、アジア、ヨーロッパ、オセアニアから報告されたが、全体的に近年の中ではおだやかであった。北半球において、アジアと北米では11月に始まり12月〜1月に増加し、ヨーロッパでは12月に始まり1月に増加した。北半球の多くでA/H1N1亜型が優勢であり、A/H3N2亜型は散発的であった。B型はほとんどの国で低いレベルであった。
インフルエンザA/H5N1
2007年9月〜2008年2月13日までに33例のヒト感染例が確定患者として報告された。2003年12月からの累計では、14カ国から360例が報告された。
最近の分離株における抗原性の特徴
A/H1N1亜型:多くがワクチン株のA/Solomon Islands/3/2006に非常に類似していたが、ワクチン株とは異なるA/Brisbane/59/2007類似株の割合が増加した。
A/H3N2亜型:いくつかの分離株はワクチン株であるA/Wisconsin/67/2005とA/Hiroshima(広島)/52/2005に類似していたが、多くの株は最近推奨されたA/Brisbane/10/2007に非常に類似していた。
B型:B/Victoria/2/87とB/Yamagata(山形)/16/88系統の両方の流行が続いた。B/Victoria/2/87系統の多くの分離株が、北半球のワクチン推奨株であったB/Malaysia/2506/2004と非常に類似してはいたが、抗原不均一性の増加が観察された。B/Yamagata(山形)/16/88系統の多くの分離株はB/Florida/4/2006、B/Brisbane/3/2007、B/Sendai(仙台)/114/2007に非常に類似していた。
抗ウイルス薬への耐性
M2阻害薬については、A/H3N2亜型のアマンタジン、リマンタジンへの耐性は高いままである。A/H1N1亜型の耐性頻度は、国によって異なった。ノイラミニダーゼ阻害薬については、オセルタミビルに耐性のあるA/H1N1亜型がいくつかの国で検出されている。検出頻度は0〜64%と、国ごとに異なった。オセルタミビルに耐性のあるA/H1N1亜型はザナミビル、アマンタジン、リマンタジンへの感受性を保持していた。A/H3N2亜型やB型のオセルタミビル耐性株の検出はまれである。
不活化インフルエンザワクチンに関する調査研究
現行のワクチン[A/Solomon Islands/3/2006(H1N1)、B/Malaysia/2506/2004および、A/Wisconsin/67/2005(H3N2)あるいはA/Hiroshima(広島)/52/2005(H3N2)のいずれかを含む三価不活化ワクチン]を受けた成人の血清により、赤血球凝集素(HA)に対する抗体をHI試験により測定した。
HI抗体価40以上の上昇がみられた割合は、A/Solomon Islands/3/2006(H1N1)については、ワクチン株そのものに対しては小児98%、成人93%、高齢者84%であり、最近の分離株に対してでは小児49%、成人59%、高齢者51%であった。A/Wisconsin/67/2005 (H3N2)については、ワクチン株そのものに対しては小児92%、成人91%、高齢者88%であり、最近の分離株に対しては小児23%、成人41%、高齢者41%であった。B/Malaysia/2506/2004については、ワクチン株そのものに対しては小児75%、成人80%、高齢者63%であり、近年のB/Malaysia/2506/2004類似株(B/Victoria/2/87系統)に対しては小児73%、成人74%、高齢者62%、B/Florida/4/2006類似株[B/Yamagata(山形)/16/88系統]に対しては小児10%、成人61%、高齢者43%であった。
2008/09インフルエンザシーズンに推奨されるワクチン株
A/Brisbane/59/2007(H1N1)類似株
A/Brisbane/10/2007(H3N2)類似株
B/Florida/4/2006類似株
(WHO、WER、83、No.9、81-87、2008)