狂犬病ワクチンについてのWHOの方針
(Vol. 29 p. 108-108: 2008年4月号)

長年にわたり、安全で高い効果のある狂犬病ワクチンは、さまざまな培養細胞を用いて生産されてきたが、この細胞培養ワクチン(CCVs)は、供給不足、または高価で購入不能である。しかしながら、CCVsを用いた皮内注射は効果があり、経済的にも、従来の標準的筋肉注射による投与法にとってかわるものとして確立されてきた。

リスクの高いアジア地域を中心とした国々では、曝露後の予防として、動物脳の抽出物からつくられる、いわゆる神経組織(脳)由来ワクチン(NTVs)が、政府の狂犬病センターにおいて無料で供給されているところがある。しかし、NTVsはCCVsに比較して、より重症の致死的な脳炎や多発性神経炎といった副作用を引き起こしうると同時に、その効果が弱く、多い回数の接種を必要とする。

現時点で薦められるのは、NTVsのヒトへの使用と生産を取りやめ、CCVsにできるだけ早く置き換えるということである。また、狂犬病ウイルス曝露に対してリスクの高いあらゆる人(居住地、職業、旅行者)に曝露前接種が勧められる。狂犬病による健康被害が問題となる地域で、かつCCVsの供給が十分でなければ、CCVsの抗原を減少させた形で行われる皮内注射は、コストを下げ得るという観点からも容認可能なものであり、今後は皮内投与において安全性と効果が示されてきた狂犬病ワクチンのみが、使用されるべきである。さらに、犬への予防接種と数の抑制に基づいた国レベルのプログラムによって、ヒトの狂犬病による死亡は急激に減少させることができる。

狂犬病制御のためのすべての公衆衛生部門によるより良い協調が重要である。

(WHO、WER、82、No.49/50、425-436、2007)

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