保育所で発生した腸管出血性大腸菌O26の集団感染事例−岩手県
(Vol. 29 p. 125-126: 2008年5月号)

2007年9月に盛岡保健所管内のA保育所(園児44名、職員13名)において、腸管出血性大腸菌(EHEC)O26による集団感染事例が発生したので、その概要について報告する。

2007年10月2日に、A保育所から盛岡保健所に4名の園児がEHEC感染症(O26)のため、欠席しているとの報告があった。盛岡保健所は、A保育所の園児、職員および園児の家族について計 120名の検便、聞き取り等、疫学調査を実施するとともに、感染の拡大防止を図るため、消毒や手洗い等の衛生指導を行った。

最終的に、医療機関からの届出例を含め、園児25名および園児の家族5名からEHEC O26:H11(VT1)が、園児1名からEHEC O26:H-(VT1&2)がそれぞれ検出された。園児の有症者は15名、無症状病原体保有者は11名で、発症日は、9月21日〜10月9日の間であった(図1)。年齢は、0歳が2名、1歳が2名、2歳が6名、3歳が7名、4歳が6名、5歳が2名および6歳が1名であり、性別は、男児18名、女児8名であった(図2)。有症者の症状は、水様性下痢または軟便が13名、腹痛が3名、発熱が2名で、血便および溶血性尿毒症症候群(HUS)の発症はなく、入院者もなかった。また、園児の家族の有症者は2名、無症状病原体保有者は3名であり、これら5名は、それぞれ別の園児の家族であった。

岩手県環境保健研究センターにおいて、医療機関から提供された菌株を含めEHEC O26:H11(VT1)22株およびEHEC O26:H-(VT1&2)1株についてパルスフィールド・ゲル電気泳動法(PFGE)による遺伝子解析を実施したところ、EHEC O26:H11(VT1) 22株は、同一のパターンを示した(図3)。

疫学調査の結果、園児の発症状況や、園児と同じ給食を喫食している職員全員が検便で陰性であったことから、保育所内での人→人感染が推察されたが、感染源・感染経路については不明であった。

EHEC O26(VT1)による集団感染事例では、軽症者や無症状病原体保有者が多いことが、過去の事例でも指摘されているが、今回も同様の傾向であった。また、家族への二次感染も複数確認され、家庭内における二次感染の予防策の啓発も重要と考えられた。

岩手県環境保健研究センター
松舘宏樹 高橋雅輝 高橋朱実 岩渕香織 藤井伸一郎 蛇口哲夫 佐藤徳行 太田美香子
田頭 滋 後藤 徹 山本哲男
岩手県盛岡保健所(現 岩手県県央保健所)
鎌田深里 佐藤なを子 森 隆司 八重樫和希 鈴木俊彦

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