焼肉店が原因施設とされた腸管出血性大腸菌O157:H7食中毒事例−福井県
(Vol. 29 p. 164: 2008年6月号)

2008年4月4日、5日に腸管出血性大腸菌(EHEC)O157(VT1&2)感染症として医療機関より届け出があった患者AおよびCについて、坂井健康福祉センター(坂井保健所)が調査した結果、患者Aは3月28日に、患者Cは27日に同一焼肉店(X店)で生レバーおよびホルモン等を喫食していたことが判明した。患者2名の共通食がX店での食事以外になく、検出された原因菌の血清型および毒素型が一致したこと、医療機関からの食中毒届出により、坂井保健所はX店の食事を原因とする食中毒と判断し、同店を4月6日から3日間の営業停止処分とした。

X店で患者と食事をともにした2グループ計15名および患者家族など17名の糞便検査を当センターにて実施した結果、患者AのグループIIの2名のうち1名(B)から、患者CのグループIIの13名のうち1名(D)からEHEC O157(VT1&2)を検出した(表1)。また、福井健康福祉センター管内で、4月6日の報道発表に気付いて医療機関を受診し、4月10日にEHEC O157(VT1&2)が検出された患者Eは、3月29日にX店で生レバーおよびホルモン等を喫食していた。全体として、O157:H7を検出した5名(有症者4名、無症者1名)の家族など計26名からは、菌は分離されなかった。なお、X店の施設・器具のふき取り材料および従業員4名からは菌は分離されず、また、食品の残品はなく、検査は実施できなかった。

患者A、C、E由来株および当センターで分離した株(患者B、D)についてパルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)を実施した。供試株は、患者由来株は医療機関から分与された各1〜2株、当センターで分離された検体については各3株、および散発事例の1株である。A由来株、B由来の3株中1株およびD由来の3株中2株は同一パターンであり、D由来の残り1株は1本のバンドが欠けたパターンであった(図1)。また、B由来の残りの2株、C由来の2株中1株およびE由来株は同一パターンで、Aなどの由来株とは1本のバンドの違いであった。このように、同一人物由来株でも異なるパターンが確認された。得られたDNA切断パターンは画像解析ソフト(Fingerprinting II)を用いて解析した結果、今回の食中毒事例由来株の類似度は、約93%と高く、近縁株であることが考えられた。

本事例で原因食品と推定される生レバーあるいはホルモン等は、近縁な複数の株に汚染されていた可能性が示唆されたことから、複数の菌株を収集し、解析をする必要があることを再認識した。

福井県衛生環境研究センター 山崎史子 永田暁洋 石畝 史
福井県坂井健康福祉センター 高原 悠 笠原香澄 内田美智子
福井県福井健康福祉センター 田中妙子 桜田基子

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