2007/08シーズン末にAH3亜型が分離されたインフルエンザ脳症患者−大阪府
(Vol. 29 p. 162: 2008年6月号)

大阪府内の病原体検査定点病院において2008年第15週(4/7〜4/13)に採取された検体から、AH3亜型インフルエンザウイルスを分離したので概要を報告する。

患者は5歳の男児で、2008年4月6日に発病し、咳と発熱(39℃台)を認めた。4月7日に医療機関を受診し、迅速診断キットにてA型インフルエンザ陽性となった。意識障害を呈し、CT、MRIで異常は認められなかったが、高振幅徐波が高頻度に混入した脳波所見と合わせてインフルエンザ脳症と診断された。治療により現在は回復している。

4月7日に検体が採取され、大阪府立公衆衛生研究所に搬入された。 MDCK細胞を用いたウイルス分離の結果、継代2代目でインフルエンザ様のCPEを認めたため、その培養上清を用いて国立感染症研究所から配布された2007/08シーズンのインフルエンザウイルス同定キットと0.7%ヒトO型赤血球を用いた赤血球凝集抑制(HI)試験を実施した。その結果、分離ウイルスは、A/Hiroshima(広島)/52/2005(H3N2)(ホモ価1,280)抗血清に対してHI価320、 B/Malaysia/2506/2004(同2,560)抗血清に対してHI価20、A/Solomon Islands/3/2006(H1N1)(同640)、B/Shanghai(上海)/361/2002(同2,560)の各抗血清に対してHI価<10を示し、AH3亜型インフルエンザウイルスと同定された。

当所ではこれまでにAH1亜型が57株、B型(ビクトリア系統)2株が分離されており、今回分離された株は2007/08シーズン最初のAH3亜型である。大阪では今シーズンの流行は終息したと考えられるが、今後のインフルエンザ発生動向に注目したい。

大阪府立公衆衛生研究所感染症部
廣井 聡 森川佐依子 加瀬哲男 宮川広実 高橋和郎
市立枚方市民病院小児科 原 啓太 田邉卓也

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