2007年9月12日に、神戸市から9月7日の飲食店料理によるサルモネラ食中毒事件の報道提供があった。その後9月14日になって、大阪府内の医療機関から下痢・発熱・腹痛で受診した患者からサルモネラを検出したと保健所に通報があり、調査した結果、神戸市の事件と同系列の飲食店を9月7日に利用していたことが判明した。この飲食チェーン店は同一営業者が近畿地区で28店舗展開しており、さらに他の店舗からも患者発生報告が相次ぎ、9月19日時点で18店舗57名に達した。患者から検出されたサルモネラはすべてSalmonella Montevideoであり、13店舗に1〜3日間の営業停止が命じられた。表1に行政処分を受けた13店舗の患者発生状況を示す。
喫食調査から原因食品は刺身、寿司の可能性が高いと考えられた。各店舗では大阪府内の配送センターから出荷された食材を使用して調理を行っていた。配送センターではマグロの解体・小分けを行い、各店舗に出荷していたが、その他の食材は仕入れ品を包装されたまま各店舗に配送しており、加工品の製造等はしていなかった。またマグロを他県の加工業者から仕入れていた店舗においても患者発生があり、配送センターが汚染の原因であるとの断定はできなかった。その後営業者の自主検査で10店舗16名の従業員からS . Montevideoが検出された。その中には店の賄い食を喫食していない人もあり、原因は不明である。
菌株の解析は、患者および従業員から分離されたS . Montevideoの33株について、パルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)による遺伝子解析と12薬剤(ABPC、SM、TC、CTX、KM、CPFX、OFLX、CP、ST、GM、NA、FOM)に対する薬剤感受性試験を行った。さらに2007年に分離された本事件以外の4株(散発保菌者由来3株および8月発生食中毒事件1株)についても比較のため解析を行った。
PFGEパターンは、患者および従業員由来株はすべて同一であった。10月に分離された散発保菌者由来株2株も本事件関連株と同一であったが、関連を調べることはできなかった。事件以前の6月の散発保菌者由来株と8月の食中毒事件由来株は異なっていた(図1)。薬剤感受性試験はすべて感受性であった。
本事件は、配送センターから各店舗に配送された食材のいずれかがS . Montevideoに汚染されていて、それを各店舗で提供したことにより発生したものと考えられる。また、各店舗当たりの患者数が少なく、無症状の従業員からの菌検出が多いという特徴が認められた。本事件以後にも同一のPFGEパターンを示す菌が散発保菌者から分離されており、保菌者からの二次汚染を防止するためにも、本血清型の動向を監視し、汚染源を明らかにする必要があると考えられる。
大阪府立公衆衛生研究所感染症部細菌課
田口真澄 坂田淳子 神吉政史 勢戸和子 河合高生 川津健太郎 山崎 渉
依田知子 浅尾 努 濱野米一 井上 清