青森県における2007/08シーズンは、2008年2月までインフルエンザウイルスAH1亜型だけが検出された。2008年6月のインフルエンザ非流行期に医療機関から上十三保健所に、高齢者救護施設でのインフルエンザ集団発生の通報があり、当センターでウイルス検査を実施した結果、AH3亜型であることが判明したので、その概要について報告する。
患者発生状況は、6月2日に発熱を伴う患者6名が医療機関を受診し、3名がA型インフルエンザであることが迅速診断キットにより確認された。その後感染が広がり、5日には患者数20名とピークに達した。6日から保健所で感染予防指導を行い、6日6名,9日4名と徐々に患者数は減少したが、流行は7月4日まで続き(図1)、最終的に入所者137名中86名が医療機関を受診し、迅速診断キットにより49名がインフルエンザと診断され、そのうちの61歳の女性1名が発症後2日後に急性肺炎で死亡した。
MDCK細胞を用いて、迅速診断キットでインフルエンザと診断された患者の鼻腔ぬぐい液13検体についてウイルス分離を行った。分離された4検体について、国立感染症研究所から配布された2007/08シーズンインフルエンザ同定キットを用い、赤血球凝集抑制(HI)試験により型別を行った。HI試験には0.75%のモルモット血球を用いた。
分離株4株は、抗A/Hiroshima(広島)/52/2005(H3N2)(ホモ価1,280)に対しHI価80で、抗A/Solomon Islands/3/2006(H1N1)(ホモ価640)、抗B/Shanghai(上海)/361/2002 (ホモ価1,280)、抗B/Malaysia/2506/2004(ホモ価1,280)に対しては、いずれもHI価<10であり、分離株すべてAH3亜型であった(表1)。
今回の高齢者救護施設でのインフルエンザの集団発生は、ワクチン接種を行っていたものの、分離株の抗原性がHI試験では、ワクチン株であるA/Hiroshima(広島)/52/2005に対し16倍と大きく異なったことが流行に繋がったものと考えられる。また、この時期の分離株は、次シーズンの流行株になり得る可能性があり、今後の発生動向に注意が必要である。
青森県環境保健センター微生物部
石川和子 吉田綾子 筒井理華 三上稔之
上十三地域県民局地域健康福祉部保健総室(上十三保健所)
三戸波子 角田純一
阿部クリニック院長 阿部芳則