2008年6〜7月のパレコウイルス3型の急増について―広島市
(Vol. 29 p. 255: 2008年9月号)

全国においてパレコウイルス3型は2006年39例、2007年10月に1例報告されて以降、検出されていなかったが、今回、感染症発生動向調査として搬入された検体より、2008年6月13人、7月1人と、パレコウイルス3型の分離が急増しているので報告する。

ウイルス分離は4種類の細胞(HE、HEp-2、RD-18S、Vero)を使用した。Vero細胞においてパレコウイルス様の細胞変性効果(CPE)を現したものについて、パレコウイルスを特異的に増幅するreal-time PCR法 1) によりパレコウイルス遺伝子の確認を行った。パレコウイルス遺伝子が確認されたものについて、VP1領域を増幅するRT-PCR 2) を行い、ダイレクトシークエンスにより塩基配列の決定を行った。GenBankに登録されている既知 2) のパレコウイルス1型〜6型と相同性を比較し、血清型/遺伝子型を決定した。

検出された患者情報はのとおりで、7月30日現在で、3病院14人からパレコウイルス3型が検出された。年齢はすべて0歳児であった。主症状は発熱(38.0℃〜40.0℃)で、上気道炎、気管支炎、胃腸炎症状、髄膜炎、熱性痙攣を呈している患者もいた。ウイルスは咽頭ぬぐい液、鼻汁、髄液、糞便から検出された。

今後も引き続き動向に注意する必要があると思われる。

 文 献
1) Corless CE, et al ., J Med Virol 67: 555-562, 2002
2) 伊藤 雅, 他, 愛知県衛生研究所年報 58: 1-8, 2008

広島市衛生研究所
山本美和子 阿部勝彦 国寄勝也 国井悦子 伊藤文明 笠間良雄

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