昨秋以降におけるエンテロウイルス検出状況―島根県
(Vol. 29 p. 253: 2008年9月号)

無菌性髄膜炎、ヘルパンギーナ、手足口病について昨秋からのウイルス分離状況を報告する。なお、ウイルス分離は培養細胞RD-A30、Vero、FL、AG-1、HELと、発疹性疾患由来検体についてはさらに哺乳マウスを用いて行った。同定は国立感染症研究所分与EP95および単味抗血清、自家製分離株抗血清を用いた中和試験によった。

ヘルパンギーナ:2007年は7月をピークとする大規模な流行であったが、秋以降は散発的な患者発生であり、A群コクサッキーウイルス(CA)16型が2株分離されたのみである。2008年は第16週(4/14-4/20)から東・中部で患者発生が始まり、第30週(7/21-7/27)の患者報告数は前週とほぼ同数の1.4人/定点、昨年同期の1/3程度の小規模な流行となっている。1〜7月の間に咽頭ぬぐい液30検体についてウイルス分離を行い、CA2が9株、CA4が2株、CA16、B群コクサッキーウイルス(CB)5型、エコーウイルス(E)18型が各1株分離されている()。

無菌性髄膜炎:2007年は中部地区で9月をピークに11月まで流行が認められた。原因ウイルスとしてE30が多数分離されたほか、10月以降はCB5も分離された。患者年齢はCB5陽性例6例中4例が1歳以下の乳児であったのに対し、E30陽性例119例中1歳以下が7例、20歳以上が14例であった。2008年は6月から中部地区で小流行が認められる。1〜7月の間に43例51検体についてウイルス分離を行い、CB3(髄液2株、咽頭ぬぐい液1株)とE18(髄液3株)を分離した()。なお、CB3陽性例はいずれも1カ月前後の乳児である。

手足口病:2007年9月、11月に全県で小規模な流行が認められた後、2008年第17週(4/21-4/27)まで患者報告数は0.5人/定点以下で推移した。2008年は第18週(4/28-5/4)から徐々に増加し、第30週(7/21-7/27)で1.5人/定点、昨年同期の1/2程度の小流行である。原因ウイルスとして2007年9月〜2008年6月までにCA16のみ26株分離された。

2008年7月現在で比較的多数分離されているエンテロウイルスは、E18(21株)、CB5(10株)、CB3(9株)、CA2(9株)であり、上記疾患以外ではE18は発疹症、熱性疾患、感染性胃腸炎から、CB5は熱性疾患、咽頭炎から、CB3は熱性疾患から分離されている。E18は前回の流行後4年が経過しており、今後の動向を監視する必要があろう。

島根県保健環境科学研究所
飯塚節子 田原研司 小村珠喜 和田美江子 保科 健

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