2008年7月、インフルエンザ非流行期に、県南西部にある健康福祉センター管内の小学校で発熱を主症状とする集団発生があり、当所においてウイルス検査を実施した。その結果、B型インフルエンザウイルスが検出されたので、その概要について報告する。
患者の発生は、生徒の欠席初日を発症日とすると、6月30日からみられ、7月7日の26名がピークとなり、7月18日まで続いた(図1)。主な症状は発熱(79%)、消化器症状(33%)、呼吸器症状(15%)であった。総欠席者数は94名で、胃腸炎、咽頭結膜熱と診断されたものもあったが、迅速診断キット陽性例を含む25名が医療機関でインフルエンザと診断された。
当所では、患者6名の咽頭ぬぐい液、または鼻咽頭ぬぐい液について、MDCK細胞およびHeLa細胞を用いたウイルス分離を実施し、MDCK細胞において6名すべての検体からインフルエンザウイルスが分離された。分離ウイルスは、国立感染症研究所から配布された2007/08シーズンインフルエンザ同定キットを用いて、赤血球凝集抑制(HI)試験(0.75%のモルモット赤血球使用)で同定した。 分離株の6株は、抗A/Solomon Islands/3/2006(H1N1)(ホモ価640)、抗A/Hiroshima(広島)/52/2005(H3N2)(同1,280)、抗B/Shanghai(上海)/361/2002 (同640)に対して、いずれもHI価<10であり、抗B/Malaysia/2506/2004(同640)に対して、すべてがHI価160を示した。分離株はVictoria系統のB型であった。
千葉県における2007/08シーズンは、2008年2月まで、主にインフルエンザウイルスAH1亜型が検出され、3月以降はAH3亜型の検出が増加した。B型は2月と3月に1株ずつ検出され、いずれも山形系統であったが、今回の集団発生は、Victoria系統であった。また、同時期に近隣の医療機関を受診した小児からVictoria系統のB型が3株分離され、さらに、成人からAH3亜型も1株分離された。今回の流行は、次シーズンの発生動向の重要なデータとなりうるので、非流行期の発生に注意を要すると考える。
千葉県衛生研究所 ウイルス研究室
丸ひろみ 小川知子 芦澤英一 福嶋得忍 篠崎邦子
千葉県市原健康福祉センター
関谷希望 石川俊樹 一戸貞人