WHOによると、世界で広く使用されているBCGワクチンとして、(1)パスツール1173 P2株、(2)デンマーク1331株、(3)イングランドにおけるグラクソ1077株(デンマーク株由来)、(4) 東京172株の4つが示されており、現在は90%以上のBCGワクチンがこの4株で占められている。
台湾では当初BCGワクチン製造にパスツール1173P2株が使用されていたが、1979年に東京172株へ変更された(訳者注:後述のように東京172株への変更が1977年と記述されている箇所もあるが、原文のまま記載)。1969〜1982年に行われた調査によると、かつて液化BCGワクチンパスツール1173 P2株を使用していた際のBCG接種後リンパ節腫脹発生率は1.7〜17.1%であった。東京172株が使用された1977年以降では、1977、78、82年のBCG接種後リンパ節腫脹発生率は0.4、1.1、0.1%であり、パスツール株よりも副反応発生率が低かった。1998年以降でBCG関連副反応に対する補償を申請した14例のうち6例(上腕骨または胸骨の骨髄炎5例、播種性BCG感染症による死亡1例)がBCGワクチンとの関連を確認されている。2002〜2006年の5年間のBCG接種による骨髄炎と播種性BCG感染症の100万接種当たり発生率は、各々3.68、0.92で、WHO報告の各々2、0.92よりも低い(訳者注:原文のまま記載)が、日本(いずれも0.01以下)よりは高率に発生している。台湾CDCの副反応調査によると、BCG接種後の肺外結核患者が数例確認されており、これらを含めると骨髄炎と播種性BCG感染症の発生率は各々6、2.25に増加するが、依然WHO基準の範囲内である。
台湾では主に1〜5歳児、乳児、新生児を対象として、東京172株0.05mg/0.1 mlを日本の管針法と異なり皮内接種している。皮内接種の方が管針法よりも正確でかつ播種性結核感染症の発生率が低いという南アフリカからの報告があるが、東京172株について異なる接種方法ごとの副反応発生率についての研究報告はない。ワクチン皮内接種法は管針法と比較し高度な接種技術が必要であるため、熟練者により処置が施されなくてはならない。
BCGは世界の2/3の国々で接種されているが、その1/3の国々からしか副反応の報告はなく、またその3/4がヨーロッパからの報告である。他の地域の副反応が未報告である可能性、株の違いや接種方法、体格などにより副反応の発生率や報告数が変化することから、BCG接種による副反応の実態を把握するためにも、BCG安全性プロファイルの確立、国内のBCG製造の改良、長期的系統的な接種後副反応調査が推奨される。
(台湾Epidemiology Bulletin, 24, No. 5, 357-371, 2008)