食用として販売されていたサワガニからの肺吸虫メタセルカリアの検出
(Vol. 29 p. 284-285: 2008年10月号)

わが国に長期間在住するアジア系外国人が、淡水産・汽水産のカニを食材とした出身地固有の料理を加熱なしで賞味し、肺吸虫に感染する事例が増加の傾向にある。飲食を共にした日本人の感染も報告されており、輸入食習慣に起因する新たな肺吸虫症が流行していることに、注意する必要が出てきた1,2)。これらの感染事例の中には、食用として販売されていたカニが原因となった場合があった。

そこで東京都内において、合計266匹の食用サワガニを購入し、肺吸虫の寄生状況を調べた。その結果、44匹(17%)から肺吸虫のメタセルカリア(人や動物への感染能力を持つ被嚢した幼虫)が検出された(表1)。寄生率が最も高かったのは、2008年2月に購入した宮崎県産のサワガニで、その値は88%に達し(検査した26匹中の23匹が陽性)、1匹のカニから最高23個のメタセルカリアが検出された。

検出されたメタセルカリアについては、形態を精査し、また塩基配列に基づく虫種同定を試みた3,4)。その結果、多くが宮崎肺吸虫と同定された。また、ウェステルマン肺吸虫(2倍体型あるいは3倍体型)が検出されたサワガニも認めた(表1)。これらの肺吸虫はいずれも人体寄生種で、感染により胸痛や呼吸困難をはじめとして、種々の呼吸器症状が発現する。

福岡市内でも食用サワガニ30匹を購入し(2008年4月・宮崎県産)、肺吸虫寄生の有無を調べた。その結果、15匹から宮崎肺吸虫のメタセルカリアが検出された。東京以外でも食用としてサワガニが販売され、しかも肺吸虫陽性のカニが混在する実態が認められた。

市販サワガニは肺吸虫感染の原因食品として危険であり、喫食するのであれば十分な加熱が必要であることを、徹底して啓発する必要がある。

 文 献
1)川中正憲, 他, IASR 25: 121-122, 2004
2)奥山さやか, 他, Clin Parasitol 18: 35-37, 2007
3) Sugiyama H, et al ., Mol Cell Probes 16: 231-236, 2002
4) Agatsuma T, et al ., J Helminthol 77: 279-285, 2003

国立感染症研究所寄生動物部
杉山 広 梅原梓里 森嶋康之 川中正憲 山崎 浩

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