沖縄県では、2004/05、2005/06、2006/07シーズンに冬季だけでなく夏季にもインフルエンザの流行が観察された。このため、患者の流行曲線は3シーズン連続で2峰性を示した(IASR 26: 243-244, 2005、27: 304-305, 2006、28: 322-323, 2007)。また、2006/07シーズンは夏季流行後も終息することなく患者発生が続き、次の2007/08シーズンに突入した(IASR 28: 324, 2007)。今回は、2007/08シーズンのインフルエンザ流行状況について報告する。
患者発生状況
本県のインフルエンザ患者数は、県内58のインフルエンザ定点医療機関(小児科34、内科24)から週単位の報告により把握されている。2007/08シーズンは、前シーズンの夏季流行が終息することなく患者発生が続いたため、2007年第36週(9/3-9/9)の5.3人から始まった.第48週(11/26-12/2)に2.6人までやや減少するものの、その後は徐々に増加し、2008年第11週(3/10-3/16)に19.0人でピークとなった。ピークの時期は、全国と比べ6週遅かった。第14週(3/31-4/6)以降、患者は緩やかに減少し、第33週(8/11-8/17)にようやく 1.0人を切った(図1)。患者を年齢群別でみると、5〜9歳が22%で最も多く、次いで0〜4歳21%、30〜49歳17%、20〜29歳15%、10〜14歳8%、15〜19歳と70歳以上が各6%、50〜69歳5%の順であった。
集団発生例
6月10日〜18日に、中部保健所管内の入所者98名(男性56名、女性42名、年齢層40〜70代)、職員27名の社会福祉施設で、インフルエンザ様の症状を呈する患者が57名発生した。患者の内訳は入所者55名(男性37名、女性18名)、職員2名であった(図2)。患者のうち4名はインフルエンザの簡易キットでA型陽性を示し、別の4名はPCR検査でAH3亜型と確定診断された。
ウイルス分離状況
患者から採取された咽頭ぬぐい液を検査材料とし、PCR法による遺伝子検査およびMDCK細胞を用いたウイルス分離を行った。分離されたウイルス株は、国立感染症研究所から配布された2007/08シーズンキットを用いて赤血球凝集抑制(HI)試験(0.75%モルモット赤血球を使用)により型別同定および抗原解析を行った。
2007/08シーズン当初は、第3週(1/14-1/20)まで前シーズン夏季の流行株であるAH1亜型のみが分離された。第5週(1/28-2/3)からはB型、ピーク直前の第10週(3/3-3/9)にはAH3亜型も確認され、AH1、AH3、B型の混合流行となった。第17週(4/21-4/27)以降は、AH3亜型とB型のみの分離で、AH1亜型は分離されなかった(図1)。
抗原解析は、分離したウイルス株のうちAH1亜型16株、AH3亜型3株(集団発生例の1株を含む)、B型14株で実施した。その結果、AH1亜型分離株は抗A/Solomon Islands/3/2006(ホモ価320)に対してHI価80〜320を示したが、11月以降のAH1亜型分離株はすべてHI価40〜80で低反応性を示した。AH3亜型分離株は、抗A/Hiroshima (広島)/52/2005(同320)に対し160〜320を示した。B型分離株は、抗B/Shanghai(上海)/361/2002(同 160)に対し80〜160を示したが、1株はHI価40で低反応性を示した。
まとめ
2007/08シーズンは、前シーズンの夏季流行株であるAH1亜型が終息しないまま移行するというこれまでに例のないシーズン開始であった。今回は、過去3シーズンでみられたような夏季に再び患者が増加する現象は観察されなかった。しかし、ピーク後の患者の減少は緩やかで、5月〜8月上旬までは定点当たり1.0〜3.0人以上で続き、B型やAH3亜型のウイルスが分離されたことは注目すべき点である。本県のインフルエンザ流行は、ここ数年で多様な様相がみられており、今後も継続して監視していくことが重要と思われた。
沖縄県衛生環境研究所
平良勝也 岡野祥 仁平 稔 糸数清正 久高 潤 中村正治
沖縄県感染症情報センター 古謝由紀子
沖縄県中部保健所 山川宗貞 大嶺悦子
沖縄県福祉保健部健康増進課 石川裕一 糸数 公