国内の検疫施設で、中国から輸入されたカニクイザルのコロニーの約30頭以上が死亡した。国立感染症研究所が発症中の3頭のサルについて行ったウイルス学的、血清学的、および病理学的解析所見では、サルはイヌジステンパーウイルスに感染し、肺炎、脳炎、および全身感染等を呈していたことが確認された。死亡あるいは安楽殺されたサル16頭からも当該ウイルスが検出された。イヌジステンパーウイルスがサルに自然感染し発症した事例は、これまでニホンザルに1例報告があったのみであり、サルの間で流行が確認されたことは今回が初めて。感染源については不明であるが、同施設は厳格な衛生管理を行っていたこと、およびサル間での流行の発生経過等から、施設への搬入時にはサルがすでに同ウイルスに感染していたことが強く示唆された。なお、同施設におけるサル間での流行は終息し、感染したサルを取り扱っていた従業員に健康被害の発生は確認されていない。
国立感染症研究所
ウイルス第一部 森川 茂 福士秀悦 倉根一郎
動物管理室 酒井宏治 網 康至 山田靖子
感染病理部 長谷川秀樹 永田典代 佐多徹太郎
感染症情報センター 松井珠乃 岡部信彦
国際協力室 中嶋建介