2008年1月、神戸市における公衆浴場でのレジオネラ症集団発生事例
(Vol. 29 p. 329-330:2008年12月号)

2008年1月11日と1月17日に市内同一医療機関から、レジオネラ症患者2名の発生届が神戸市保健所に提出された。患者は55および58歳男性で、ともに発熱、咳嗽、喀痰、呼吸困難、意識障害等の症状を呈し、肺炎と診断され入院した(表1 )。両名とも尿中レジオネラ抗原が陽性、喀痰よりレジオネラ属菌が分離され、PCR法によりレジオネラ遺伝子が検出されたため、レジオネラ症と最終診断された。この2名の患者がたびたび利用していた共通の公衆浴場があることが判明し、そこでの水系感染と推定された。

1月18日、保健所衛生監視事務所は患者が共通利用していた当該公衆浴場の衛生指導を行うと同時に、5カ所の浴槽水を採取した。当該公衆浴場は休み明けで、営業時間前であったため、濾過器などは稼働しておらず、水風呂およびカラン水(混合栓)の遊離残留塩素濃度はそれぞれ1.4ppmおよび0.2ppmであったが、その他の浴槽はいずれも未検出であった。

レジオネラ検査の結果、2カ所の浴槽水からLegionella pneumophila 血清群(SG)1 を検出し、菌量はそれぞれ20および50cfu/100mlであった。これらの浴槽はいずれも気泡風呂で、同一の濾過器を使用する構造であった。市保健所は、感染症の予防および感染症の患者に対する医療に関する法律第十五条、第六十四条、および神戸市例規・保健所長委任規則により、当該医療機関に2名の患者株の分与を依頼し、菌株の譲渡を受けた。この株について血清型別を実施したところ、同じくL. pneumophila SG1であった。

感染症法第十五条に基づく積極的疫学調査として、患者喀痰および浴槽水由来株の遺伝子型別(SBT)1)およびパルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)解析を行った。患者分離株4株および浴槽水分離株4株中3株の計7株の遺伝子型が一致し、残り1株は他の株と遺伝子型が異なっていた(表2)。PFGE法でも同様の結果であった(図1)。今回の感染症例では、患者喀痰および浴槽水由来株は同じSBT型およびPFGEパターンを示していたため、感染源はその公衆浴場であることが判明した。

衛生指導後の再検査ではレジオネラ属菌はすべて検出されなかった。管理記録を残すなど、浴場施設の自主的な定期的維持管理が必要であると考える。

初診した医療機関の適切な対応と、その後の保健所およびその他の行政機関の連携により、感染源を特定することができた事例として報告する。

 文 献
1) European Working Group for Legionella Infections,
http://www.hpa-bioinformatics.org.uk/legionella/legionella_sbt/php/sbt_homepage.php

神戸市保健福祉局環境保健研究所
木股裕子 南出正之(現 兵庫県予防医学協会) 貫名正文
神戸市保健所
国立感染症研究所細菌第一部 常 彬 前川純子

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