パルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)法は電場の方向を交替させることで分子量の大きいDNA断片を分離するゲル電気泳動の方法である。この解析法は感染源の特定や感染事例の関連性を明らかにし、レジオネラ感染の原因究明と感染拡大防止にもよく使われている。しかし、従来のプロトコルは4日間かかり、再現性がよくないことが報告されていた1,2)。そこで、我々は従来の方法の改良を試みた。
米国疾病予防管理センター(CDC)が公開しているグラム陰性菌を解析するPFGEのプロトコルを参考にし、レジオネラ用PFGEのプロトコルの改良を行った(図1)。従来法に比べて、改良法ではリゾチームによる溶菌処理を削除し、プロテイナーゼKの濃度を0.1mg/mlまで減らし、処理時間を1時間に短縮した。さらに、高濃度(50units/sample)のSfi I(40U/ul; Roche Diagnostics)を用いて、DNA消化を行った(図1)。
従来法および改良法のプロトコルによるPFGEプロフィールを図2に示している。従来法により解析した結果はAである。制限酵素の不完全消化断片が多く残っていて、また染色体DNAへのダメージによるスメア(特にlanes 3, 5, 9, 10 )がよく見られるため、プロフィールの再現性が取れにくくなる。改良法により解析したプロフィールを図2のBとCで示している。BとCには別々に作られたプラグが使われた。PFGE解析時間が2日間に短縮し、制限酵素による不完全な消化断片および染色体DNAへのダメージが見られなくなり、再現性も取れるようになった3)。
文 献
1) Amemura-Maekawa, J, et al ., Microbiol Immunol 49: 1027-1033, 2005
2) De Zoysa, AS and Harrison, TG, J Med Microbiol 48: 269-278, 1999
3) Chang, B, et al ., Jpn J Infect Dis 62, 2009, In press
国立感染症研究所細菌第一部 常 彬 前川純子 渡辺治雄