焼肉店が原因施設とされた腸管出血性大腸菌O157:H7による食中毒事例―福井県
(Vol. 29 p. 345: 2008年12月号)

概要および経過
2008(平成20)年7月16日、県内の医療機関から嶺南振興局二州健康福祉センター(二州保健所)に腸管出血性大腸菌(EHEC)O157感染症の届出があった。調査の結果、届出の患者Aは家族4名(本人を含まず、以下同様)と7月5日に焼肉店Vで生レバー、ホルモン等を喫食して、下痢、腹痛等の症状を呈しており、同日に同店を利用した他のグループのうち1グループ3名も同様の症状を呈していた。両グループの共通食が焼肉店Vでの食事以外になく、有症者3名について医療機関から食中毒の届出があったことから、二州保健所は焼肉店Vで提供された食品を原因とする食中毒と断定し、同店を7月17日から3日間の営業停止処分とした。

また、7月14日にもEHEC O157感染症の届出が2件(患者BおよびC)あったが、患者Bは家族6名と7月4日に、患者Cは家族2名と7月6日に焼肉店Vで生レバーやホルモン等を喫食していたことが判明した。さらに、7月10日にEHEC O157感染症の届出があった患者Dは家族3名と飲食店Wで、7月14日にEHEC O157感染症の届出があった患者Eは家族3名と飲食店Xで、それぞれ牛刺しやホルモン等を喫食していたが、飲食店WおよびXの肉の仕入れ先は焼肉店Vと同じZ店であった。一方、7月18日にEHEC O157感染症の届出があった患者Fは、飲食店VおよびZ店との関連は不明であった。

検査結果
当センターに7月17日〜23日に搬入された焼肉店Vの施設のふきとり材料3検体、従事者4名、有症者3名および届出患者6名(A〜F)の同行者等27名の糞便、計37検体についてEHEC O157の検査を実施したところ、従事者2名(G、H)、患者Aの同行者1名(I)および患者Cの同行者1名(J)からEHEC O157:H7(VT1&2)が検出された。また、従事者Gの家族1名(K)からも、EHEC O157:H7(VT1&2)が検出された(表1)。なお、焼肉店Vの従事者2名およびその家族1名も同店の食肉を喫食していた。無症状病原体保有者5名(G、H、I、J、K)を含む患者11名(A〜K)由来株について、Xba I処理によるパルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)を行ったところ、すべて同一パターンを示し、国立感染症研究所の解析によりType No. b142と判定された。

まとめ
本事例の原因は、施設または従業員からの二次汚染を含む焼肉店Vにおける食肉の汚染だけでなく、疫学調査結果およびPFGEパターン解析により、肉の仕入れ先であるZ店での食肉の汚染、あるいはZ店からさらに流通経路を遡った時点での汚染の可能性も示唆された。また、今回の患者の多くは飲食店が提供した未加熱の食肉を喫食していたことから、食肉の生食のリスクについて、営業者への指導の徹底と消費者への一層の啓発が必要であると思われた。

福井県衛生環境研究センター 永田暁洋 山崎史子 石畝 史
嶺南振興局二州健康福祉センター 大村勝彦

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