9月に中学校で発生したA/H3N2亜型インフルエンザウイルスによる複数患者発生事例―栃木県
(Vol. 29 p. 340: 2008年12月号)

2008年9月上旬に管内の中学校で複数のインフルエンザ患者が確認された事例があり、当センターにてウイルス検査を行ったところ、A/H3N2亜型インフルエンザウイルスを分離したので報告する。

患者発生状況
2008(平成20)年9月3日〜9月9日にかけて、当該中学校2年生[4クラス(約30名/クラス)] の4名が、発熱および呼吸器症状を訴え、医療機関を受診し、いずれもA型インフルエンザであることが迅速診断キットにより確認された。なお、9月10日以降の新たな患者の発生は確認されていない。

ウイルス検査結果表1
当センターに患者2名(当該中学校2年生の生徒)の鼻汁が検体として搬入され、MDCK細胞によるウイルス分離を実施した。培養上清について0.75%モルモット血球で赤血球凝集能(HA)を確認し、2007/08シーズンおよび2008/09シーズン抗原解析用抗体キット(国立感染症研究所配布)を用いた赤血球凝集抑制(HI)試験を実施してHI価を求め、インフルエンザウイルスの型・亜型別同定および抗原解析を行った。また、PCR法によりNA亜型を同定した。両方の検体からインフルエンザウイルスが分離され、抗A/Hiroshima(広島)/52/2005(H3N2)血清(ホモ価320)に対しHI価160〜320、抗A/Uruguay/716/2007(H3N2)血清(同640)に対しHI価160、抗A/Solomon Islands/3/2006(H1N1)血清(同320)、抗A/Brisbane/59/2007(H1N1)血清(同320)、抗B/Shanghai(上海)/361/2002血清(同320)、および抗B/Brisbane/3/2007血清(同2,560)、抗B/Malaysia/2506/2004血清(同640)に対しては、いずれもHI価<10であった。また、分離された2株はいずれもN2亜型と同定された。

今夏は岡山県(IASR 29: 253-254, 2008)、青森県(IASR 29: 228-229, 2008)、千葉県(IASR 29: 254-255, 2008)、横浜市(IASR 29: 312-314, 2008)など、全国各地からインフルエンザの集団発生事例が報告されている。本県内においても今回の事例以外に、これまでに県北健康福祉センター管内で9月下旬にB型インフルエンザの患者が複数発生した事例(PCR法で2名の検体からB型インフルエンザウイルスを検出)が1件、続いて10月上旬にB型インフルエンザウイルスによる小学校の学級休業等を伴う集団発生事例(3名の検体からB型インフルエンザVictoria系統株を分離)が1件発生している。本県内で非流行期にこうしたインフルエンザの集団発生事例等が報告されたのは確認し得る過去10年間でも例がなく、今後も1年を通してインフルエンザの発生動向に注意していく必要がある。

栃木県保健環境センター 平田明日美 大金映子 舩渡川圭次
栃木県県北健康福祉センター 渡辺真美子 沖田花子 石川信一

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