2008年10月、大阪府堺市において2008/09シーズン初となる集団感染事例からB型インフルエンザウイルスが分離されたので報告する。
堺市内の東部に位置する小学校で発熱を主症状とする集団かぜが発生し、1クラスが学級閉鎖された。このクラスの欠席状況をみると、在籍児童39名のうち、9月25日に1名の欠席(医療機関においてインフルエンザと診断)が認められたのを初発日とし、10月6日のピーク時には20名の欠席がみられた(図1)。
当所には、10月6日にかぜ様症状で欠席していた8名の鼻汁が搬入され、MDCK細胞にてウイルス分離を実施した。8検体のうち6検体において、MDCK初代培養で3〜5日目からCPEが観察され、0.75%ヒトO型赤血球を用いた赤血球凝集(HA)試験では128〜256倍を示した。そこで、ウイルス分離株について国立感染症研究所より配布された2007/08シーズン用インフルエンザウイルス同定キットを用いて、赤血球凝集抑制(HI)試験により型別を行った。分離された6株すべてで抗B/Malaysia/2506/2004血清(ホモ価5,120)に対してHI価160(1株のみ320)を示した。一方、抗A/Solomon Islands/3/2006(H1N1)血清(同320)、抗A/Hiroshima(広島)/52/2005(H3N2)血清(同640)、抗B/Shanghai(上海)/361/2002血清(同2,560)ではいずれもHI価<10であり、分離株はすべてVictoria系統のB型と判定された。
堺市感染症発生動向調査のインフルエンザ患者発生状況では2007/08シーズンの立ち上がりは第43週(10/22-10/28)であったが、2008/09シーズンは第39週(9/22-9/28)と約1カ月早い立ち上がりを示した。2007/08シーズンの検出状況ではB型は山形系統とVictoria系統が混在していたが、今シーズンはVictoria系統がまず分離された。この集団発生6日後に小児科定点依頼の検体からAH3亜型が複数分離され、現時点ではA型とB型インフルエンザが混在した流行状況である。今後も保健所や医療機関等と協力し、インフルエンザ流行の動向把握に努めていきたいと考えている。
堺市衛生研究所
内野清子 高橋幸三 三好龍也 松尾光子 狩山雅代 吉田永祥 田中智之
堺市保健所医療対策課
柴田仙子 寺田憲二 藤井史敏
堺市医師会
西垣正憲 金崎光治 片桐真二