全国の地方衛生研究所から1980年1月〜2008年12月に87,517例のエンテロウイルス検出例が病原微生物検出情報に報告された(2008年12月16日現在報告数)。
エンテロウイルス全検出例中、咽頭ぬぐい液からの検出が52,600例(60%)と最も多く、糞便(26%)、髄液(19%)の順であった(表1、同一人の異なる材料から同じ血清型のエンテロウイルスが検出された例を含む、以下同様)。
髄膜炎の病原として代表的なエコーウイルス30型(E30)は11,914例(全検出例の14%)から検出され、このうち、髄液からの検出が59%と最も多く、咽頭ぬぐい液(41%)、糞便(33%)からの検出よりも多かった。
手足口病の病原であり、中枢神経合併症を起こすことが知られているエンテロウイルス71型(EV71)は4,112例(全検出例の4.7%)から検出され、このうち、咽頭ぬぐい液(81%)からの検出が最も多く、糞便(17%)、皮膚病巣(6.8%)、髄液(2.0%)からの検出よりも多かった。
EV71と並んで手足口病の病原であるコクサッキーウイルスA16型は7,277例(全検出例の8.3%)から検出され、このうち、咽頭ぬぐい液(84%)からの検出が最も多く、糞便(13%)、皮膚病巣(10%)、髄液(0.6%)からの検出よりも多かった。
E30は髄膜炎を起こしやすく、髄液からの分離率が高いのに対し、EV71はたとえ髄膜炎を起こしていても髄液からの分離が困難であることが国内外で報告されている。今回の集計はこれと矛盾しない結果であり、1980年代、1990年代、2000年代と年代別に見ても同様であった。髄膜炎患者からのウイルス分離には、髄液のみならず、咽頭ぬぐい液と糞便も採取すること、特に周囲で手足口病が流行している場合には手足口病の症状が無くても髄液と同時に咽頭ぬぐい液と糞便を検査することが必須と考えられる。
国立感染症研究所感染症情報センター 藤本嗣人 山下和予