ヨーロッパにおけるリスク集団に季節性インフルエンザ予防接種を提供する科学的な根拠
(Vol. 30 p. 19 : 2009年1月号)

この論文は、欧州連合(EU)加盟国において、毎年の季節性インフルエンザ予防接種によって恩恵を得るリスク集団の選択を支持する科学的な根拠について要約することを目的としたものであり、2つの主要なリスク集団(65歳以上の高齢者と慢性疾患を有する人々)のEU加盟各国人口に占める割合を推計することを目指している。

この論文では、リスク集団を「ワクチン接種によってリスクを減らす効果が示され、もし季節性インフルエンザに感染した場合には、副反応の平均的リスクより罹患によるリスクが高い集団」と定義し、科学論文のレビューを行った。第1に、インフルエンザ感染に引き続き重篤な転帰に結びつくリスク要因に言及していること、第2に、インフルエンザ予防接種が重篤な転帰をきたすリスクを減らせるか、あるいは、少なくともインフルエンザ感染を防ぐかを調査していること、という条件に沿って文献を検索した。また、医療従事者や介護者へのインフルエンザ予防接種によってリスク集団を守るという見方を支持するかどうかについての記載も調べた。リスク要因や疾病負荷の状況がヨーロッパに特有の可能性があるので、ヨーロッパ住民について実施された研究を選択した。

結果として、高齢者と慢性疾患をもつ人々はリスクが高く、65歳以上のすべての高齢者と慢性疾患を持つ特定の集団の人々に対して毎年予防接種を提供することによってリスクを減らすことが科学的に示されていた。また、これらの2つの集団はEU諸国人口の19〜28%にのぼり、2006年では、65歳以上の高齢者が8,400万人、65歳未満の慢性疾患のある人々が4,100万人になると推定された。さらに、これらの2つのリスク集団に対応する医療従事者にインフルエンザ予防接種を実施することがリスク集団を守るということについても強い根拠のあることが確認された。その他のリスク集団と考えられる子供と妊婦に対する接種については、現在のところ確固とした科学的な根拠はなかった。

(Eurosurveillance, 13, Issue 43, 36-43, 2008)

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