バーベキューを原因とする腸管出血性大腸菌O157食中毒事例―福井県
(Vol. 30 p. 16 : 2009年1月号)

2008(平成20)年8月30日、S市内の医療機関から2名の腸管出血性大腸菌(EHEC)感染症O157(VT1&2)の届出があり、この2名は同じバーベキューを喫食していたとの情報が丹南保健所にあった。調査の結果、2名は8月23日にS市内の団体主催のバーベキューに参加しており、参加者53名のうち10名が腹痛、下痢等の症状を呈したことが判明した。丹南保健所は、これら有症者の共通食がバーベキューでの食事以外にないこと、および医療機関の届出があったことから、バーベキューでの食事を原因とする食中毒と断定した。さらに有症者4名が医療機関を受診し、うち2名がEHEC O157感染症と診断された。

当センターでは9月2日〜15日にバーベキュー喫食者の糞便検査を実施し、その結果、喫食者45名のうち、有症者4名中1名および無症者41名中7名からEHEC O157(VT1&2)が検出された。陽性者の検体採取日は9月2日〜7日で、喫食後10日〜15日目であった(図1)。医療機関の検査結果を併せると51名中12名が陽性で、内訳として小学生33名中11名および大人18名中1名が陽性であった(2名は検査未実施)。濃厚接触者の糞便検査は8月31日から患者家族45名および患者の接触者26名について実施したが、すべて陰性であった。一方、同時期に散発事例としてEHEC O157(VT1&2)感染症の届出が、丹南保健所管内で2名(患者AおよびE)、坂井保健所(患者C)および二州保健所(患者D)管内で各1名あった。保健所の調査の結果、患者Dは上記のバーベキューの食肉等を納入した焼肉店にて9月4日に食事をしていたこと、および患者Eは自宅で豚ホルモンを喫食したことが判明したが、患者AおよびCについては焼肉等の喫食は確認できなかった。

バーベキュー関連の11株(図2の1〜11)および散発事例の6株(図2のA〜F)について、パルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)を実施した結果、バーベキュー関連株および散発事例の3株(C、D、E)は4つのパターンに分けられ、類似度は93%以上で近縁種と思われた。国立感染症研究所の解析により、主なパターンはType No. b142と判定された。このtypeはIASR(29:119-120, 2008)によると、2007年に福井県を含む11都府県で検出されたtypeであり、2008年7月にも二州保健所管内における散発型集団事例(IASR 29: 345, 2008)で検出されていた。

今回のバーベキュー事例では、関係者からの聴取により生焼けの肉を食べていたことが判明したため、県はバーベキュー施設の管理者等に対し、肉の十分な加熱調理および食事の際の箸の使い分け等について利用者へ周知する旨を依頼した。

福井県衛生環境研究センター
石畝 史 永田暁洋 山崎史子 浅田恒夫
福井県丹南保健所
佐賀友輔 高原幸代 水上さとみ 中村成人

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