2007年10月に発生した他県からの移入例を発端とした麻疹集団感染事例―沖縄県
(Vol. 30 p. 36:2009年2月号)

2007年1月〜7月に10例の麻疹患者が確定診断され、このうち7例は旅行者などによる県外からの移入例で、それ以外の例は移入例からの二次感染例であったことは既に報告した(IASR 28: 245-247, 2007)。その後も、関東地方を旅行後に発症した症例が8月1例(25歳男性)、10月1例(27歳男性)、九州地方からの旅行者が12月1例(25歳女性)、計3例発生した。このうち、10月に発生した移入例1例を感染源とした9名の集団感染が中部保健所管内で発生した。

集団感染例
保健所の疫学調査に基づく各症例間のリンクを図1に示した。初発例No.1は、9月中旬に東京出張後、9月30日に発熱、発疹が出現し、A医療機関を受診した。No.2は、この日家族の見舞いのために同医療機関を来院した際に感染し、その後No.3〜6に家族内で感染させた。さらにNo.2は複数の医療機関を受診しており、B医療機関ではNo.7とNo.8、C医療機関ではNo.9が待合室で感染し、No.2からの三次感染者は合計7名となった。また、C医療機関ではNo.3からNo.10が感染し、四次感染者となった。このように、初発例から複数の医療機関内で5例、家族内で4例と感染が拡がり、計10名の麻疹患者が発生した。患者の年齢は、20代5例、10代3例、30代2例の順で、ワクチン接種歴は、あり3例、なし3例、不明4例であった。

実験室診断
検査診断は、集団感染の患者10例中、1例はIgMの抗体測定が陽性値(6.75)を示し、残りの9例はRT-PCRで陽性となったため麻疹と確定診断された。PCR検査で陽性となった9例はすべて遺伝子型D5型に分類され、これらのウイルス株と2007年1〜7月(IASR 28: 245-247, 2007)、8月および12月に分離されたウイルス株のN遺伝子(450bp)の塩基配列の相同性は、100%一致した。

まとめ
2007年の麻疹確定例は、1〜7月10例(IASR 28: 245-247, 2007)、8〜12月12例、計22例となった。これらの患者のうち11例は旅行者による移入例であり、これ以外の11例はすべて移入例と疫学的にリンクしていた。今回の集団感染は、医療機関や家族内で感染が広がり四次感染者まで発生したことから、終息まで約50日間を要した。この間に保健所がリストアップした接触者調査対象者は1,476名となり、個人または代表者に対して注意喚起が行われた。接触者の中には米軍基地内居住者も含まれ、これらの対象者については在沖米軍海軍病院で健康観察が行われた。このように中部地区の麻疹流行は、保健所および関係機関の連携と協力により封じ込めに成功した。

本県では、2005年に麻疹発生ゼロを達成した(IASR 27: 87-88, 2006)が、2006年からは旅行者による麻疹移入例や、これを発端とした集団感染が相次いでいることから、今後も麻疹全数把握体制および発生時の調査体制を強化、維持していくことが重要と思われた。

沖縄県衛生環境研究所
平良勝也 岡野 祥 仁平 稔 糸数清正 久高 潤 中村正治
沖縄県中部保健所 大城志乃(現在八重山保健所) 松野朝之
沖縄県福祉保健部健康増進課 石川裕一 糸数 公

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