2008年の世界保健総会(WHA)で、加盟国は世界の麻疹に関する展望と戦略の一つとして2005年に設定した「2010年までに麻疹による死亡を2000年と比較して90%減らす」という目標が確認された。麻疹による死亡を減らすWHO-UNICEF包括戦略では、優先的な対象国を47カ国に絞っている。
戦略の目標は、
(1)すべての地域で、12カ月時点までの初回麻疹含有ワクチンの接種率90%以上を達成して維持する。
(2)すべての子供に、定期接種あるいは補足的接種として2回目の予防接種の機会を提供する。
(3)検査室の支援を受けた効果的なサーベイランスを導入する。
(4)麻疹症例に対して適切な治療を実施する。
予防接種活動:WHO-UNICEFの推計によると、初回麻疹含有ワクチンの接種率は2000年以来着実に改善しており、2007年には82%に達した。最も大きく改善したのは、アフリカ地域と東南アジア地域であり、これらの地域の2007年の接種率は80%未満であった。
サーベイランス活動:世界の麻疹報告数は、2000年の852,937例(168カ国からの報告)から2007年の279,006例(178カ国からの報告)に、67%減少した。すべての地域で麻疹報告数は減少し、特に減少幅が大きかったのは、南北アメリカ地域(93%)、アフリカ地域(85%)で、もっとも減少幅が小さかったのは東南アジア地域(12%)であった。
2007年の推定死亡数:世界の麻疹による推定死亡数は、2000年の750,000人(543,000〜982,000人)から2007年の197,000人(141,000〜267,000人)に74%減少した。麻疹死亡の90%以上は5歳未満の小児で、2000年は679,000人(490,000〜890,000人)、2007年は177,000人(126,000〜240,000人)であった。2000〜2007年の間に麻疹による推定死亡数が最も減少した地域は、東地中海地域(90%減)とアフリカ地域(89%減)で、それぞれ世界の麻疹死亡数減少の16%と63%を占めた。2007年は、優先的な対象国47カ国が世界の麻疹死亡数減少の96%を占めた。
麻疹対策の進展の結果として、2000〜2007年に世界でおよそ1,100万人の麻疹による死亡を防げたことになる。
(WHO, WER, 83, No.49, 441-448, 2008)