オーストラリアでは、乳幼児を対象としてHaemophilus influenzae type b(Hib)ワクチンが1993年に導入され、Hib 感染リスクが高い先住民の子供はPRP-OMP* (生後2、4、12カ月の3回接種)が、非先住民の子供はHbOC* (2、4、6、18カ月の4回接種)が使用されていた(Hibワクチン第一時代)。その後2000年7月から民族に関係なくすべての子供にPRP-OMPが使用されるようになり(Hibワクチン第二時代)、2005年11月からは人種や居住地によってPRP-OMPまたはPRP-T(2、4、6、12カ月の4回接種)が接種されるようになった(Hibワクチン第三時代)。
国内のサーベイランスでは、1993〜2005年の間に計1,046例の侵襲性Hib疾患症例が報告された。
四半期ごとの平均報告数は、Hibワクチン導入前である1991年1月〜1993年6月までが120例(81〜142例)であったのに対し、1995年1月〜2000年6月は14例(3〜33例)、2000年7月〜2005年12月は6例(1〜12例)で、ワクチン導入により報告数が著しく減少した。Hib疾患による死亡は、1995年1月〜2000年6月は16例(致死率5.2%)、2000年7月〜2005年12月は7例(致死率5.8%)であった。2005年には初めて死亡が0となった。罹患率は先住民と非先住民のいずれも顕著に減少しているが、罹患リスクは依然として先住民の方が高い。
2000年以降、すべての州および準州においてHibワクチンの接種率は90%以上を保っている。先住民の方が非先住民よりも接種率がわずかに低い(約1%)が、それでも90%以上である。
2000年7月〜2005年12月の間に侵襲性Hib疾患に罹患したワクチン接種対象年齢の小児65例のうち37例(57%)はワクチン未接種または不完全接種であり、ワクチンの接種によって予防が可能であった者と考えられた。ワクチン接種を完了した子供に比べると、ワクチン未接種または不完全接種の子供のHib疾患罹患率は約15倍高いという結果であった。
*PRP-OMP、HbOC、PRP-Tは、それぞれ髄膜炎菌外膜蛋白、無毒性変性ジフテリア毒素、破傷風トキソイドをキャリア蛋白に用いたワクチン
(Australia CDI, 32, No.3, 316-325, 2008)