集団発生事例から分離されたA/H1N1亜型インフルエンザウイルスについて―仙台市
(Vol. 30 p. 47-49:2009年2月号)

2008年10月下旬に仙台市内の小学校1クラスでインフルエンザによる学級閉鎖が報告され、患者の咽頭ぬぐい液を採取し検査した結果、 A/H1N1亜型インフルエンザウイルスを分離したので報告する。

患者発生状況
2008年10月28日に小学校3年生の1クラス(在籍者数40名)の25名がインフルエンザ様症状を呈し、うち14名が欠席したため、学級閉鎖の措置がとられた。このうち2名が医療機関を受診し、迅速診断キットによりA型インフルエンザであることが確認されたため、調査を実施した。

ウイルス検査結果
搬入された患者5名(医療機関で迅速キットによりA型インフルエンザ陽性と確認された小学生4名と生徒の母親1名)の咽頭ぬぐい液5検体を、MDCK細胞に接種し、初代および2代継代培養で3検体からウイルスが分離された。分離ウイルスについて国立感染症研究所より分与された2008/09シーズン用インフルエンザウイルス同定キットを用いてHI試験を行ったところ、抗A/Brisbane/59/2007(H1N1)血清(ホモ価640)に対しHI価320、抗A/Uruguay/716/2007(H3N2)血清(同640)、抗B/Brisbane/3/2007血清(同2,560)および抗B/Malaysia /2506/2004血清(同640)に対しては、いずれもHI価<10であった。

HA遺伝子(1,014bp)、NA遺伝子(1,044bp)、MP遺伝子(926bp)の相同性解析を行った結果では、分離ウイルス3株の塩基配列は100%一致した。一方、今シーズンのワクチン株であるA/Brisbane/59/2007に対するHA遺伝子、NA遺伝子およびMP遺伝子の相同性はそれぞれ99.2、99.1、99.6%であった。また,HA遺伝子では3カ所のアミノ酸置換(G204V、A208T、H211R)が、NA遺伝子ではオセルタミビルの耐性株の指標となるH275Yのアミノ酸置換が認められたが、M2遺伝子上のアマンタジン耐性株の指標となるS31Nのアミノ酸置換は認められなかった。NA遺伝子の系統樹解析の結果、今回の分離株はサブクレード2Bに属しており、HA遺伝子やMP遺伝子の系統樹解析でも同じクラスターに分類された(図1図2図3)。

仙台市内でのインフルエンザウイルスの分離は、これが今シーズン初めてであり、昨シーズンよりも約1カ月早い分離となった。また、オセルタミビルの耐性株の指標となるH275Yの変異を有するインフルエンザウイルスの分離は仙台市内では初めてであり、今後の分離株についても継続して調査していく必要があると思われる。

仙台市衛生研究所
勝見正道 大山 文 関根雅夫 小黒美舎子 熊谷正憲
太白区保健福祉センター
浅野惠美子 野崎 文 工藤信子 渡辺洋一 永山雄一 吉田菊喜

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