短期間に高齢者福祉施設で発生したノロウイルス集団感染6事例―藤沢市
(Vol. 30 p. 73-74: 2009年3月号)

神奈川県藤沢市内の複数の高齢者福祉施設で、短期間にノロウイルス(NV)を原因とする感染性胃腸炎が集団発生したので、その概要を報告する。

2008年12月26日〜2009年1月13日までに、計6カ所の高齢者福祉施設から、「入所者、通所者および職員に嘔吐や下痢を訴える患者が発生している」、と当所に相次いで連絡があった。経過はのとおりである。

発症者は、施設の利用者数452名中127名(発症率28%)、職員257名中44名(発症率17%)であった。主症状は嘔吐と下痢で、症状の持続期間は1〜7日間で、1日間が最も多く、入院は2名で、重症化した者はみられなかった。嘔吐、下痢の症状を呈した有症者、および一施設においては無症状の調理従事者も対象として計30検体の検便を実施した。検査はTaqManTM プローブを用いたリアルタイムPCR法で行い、19検体からNVのgenogroup II (GII)が検出された。各施設での初発の患者発生から最後に新規の有症者が発生するまでの期間は7日間〜18日間、平均10日間であった。

高齢者施設での胃腸炎の集団発生は多種の病原体によるが、冬季はNV感染によるものが多い。今回、当所に連絡があった事例について、原因探索・調査を実施したところ、全施設の検体からNV GIIが検出された。感染性胃腸炎は保健所や自治体の担当部署への報告義務はないが、感染が拡大して相談・連絡されることがある。今回初期対応が不十分で長期間にわたり発症者を出した施設もあり、初期対応の重要性が再認識された。一方、6カ所の高齢者福祉施設のうち5カ所は市の南部に位置し地域集簇性がみられ、感染者が複数の施設を利用する、あるいは従事する等で感染が拡大した可能性が考えられた。今回の事例では多数の施設で感染性胃腸炎が集団発生したことで、市の介護サービスに多大な影響がみられ、早期に注意喚起し、感染拡大防止に努める必要があると思われた。当市ではNV感染症の発生は例年11月〜3月に多くみられるため、今後も適切な対応が必要と考えている。

藤沢市保健所
佐々木つぐ巳 小出元子 弘光明子 宮崎晃子 田渕 明 田口良子(保健予防課)
南 直貴 伊藤朋子 真弓修平 大野文明 林美奈子 鹿嶋 傳 宮宇地裕美 猪俣秀哉(生活衛生課)
寺田直樹 佐藤 健 平井有紀 沖津忠行(衛生検査課)

今月の表紙へ戻る


IASRのホームページに戻る
Return to the IASR HomePage(English)



ホームへ戻る