ロンドンでのラッサ熱死亡例、2009年1月
(Vol. 30 p. 112-114: 2009年4月号)

2009年1月、英国において11例目のラッサ熱輸入例がロンドンで診断された。

これまで英国に持ち込まれたラッサ熱は、シエラレオネあるいはナイジェリアからのもので、1971〜2003年に10例あり、2000年に1人が死亡している。医療従事者や接触者の感染例はなかった。

2009年1月8日、66歳男性が発熱、下痢、錯乱症状を呈し、ロンドンのHomerton大学病院に入院した。男性は、ナイジェリアのアナンブラ州を旅した後、1月6日にアブジャから飛行機でロンドンに帰国した。機内で既に発熱、不快寒、食欲低下、腹痛が出現していたが、ヒースロー空港から公共交通機関で東ロンドンの自宅に帰宅した。発熱、悪寒、倦怠感、軽度下痢が3日間続き、1月8日に救急車にてロンドンのHomerton大学病院に運ばれた。1月16日に腸チフスの疑いで隔離された。1月22日にはUniversity College病院の感染症病棟に運ばれ、その日の夕方にはRoyal Free病院の高度セキュリティー感染症病棟に運ばれた。1月23日にRT-PCRおよび血清抗体価上昇によりラッサ熱と診断され、その後、患者の血液と尿からウイルスが分離された。患者にはリバビリン投与が行われたが、1月29日に死亡した。

本事例に関しては、国際保健規則(IHR)に基づいたWHOへの報告、州保健局による調査、WHOを通じてのナイジェリアへの報告、ヨーロッパ疾病予防管理センター(ECDC)への報告、各医療機関への通知、メディアへの報告が行われた。

接触者調査が1月23日から電話インタビューや面談によって行われ、航空機の同乗者、患者の近隣在住者、救急車スタッフ、3つの病院の医療従事者、検体を扱った他機関検査室職員等が3つのカテゴリー()に分類された。航空機の同乗者は、航空会社に病人や機内介助の求めの記録がなかったためリスクは極めて低いと判断され、また、ECDCもヨーロッパの住民に大きな危険はないという判断を下した。Homerton大学病院の合計328人が接触可能性者とされ、うち連絡が取れていない34人(10%)には現在も連絡が取り続けられている。Homerton大学病院職員に対する曝露の疑い日から21日間の監視期間が2月12日で終わる。現在までのところ接触者は誰も発病していない。また、カテゴリー3(高リスク)に分類された者はいなかった。

(Euro Surveill. 2009; 14(6): pii=19117)

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