腸管出血性大腸菌O145:H-による家族内感染事例―岩手県
(Vol. 30 p. 131-132: 2009年5月号)

2008年8月に、下痢および腹痛のため、奥州保健所管内の医療機関を受診した患者から、腸管出血性大腸菌(EHEC)O145(VT1産生)が分離され、同保健所に患者発生届が出された。同保健所は、家族4名(いずれも無症状)の便を採取し、当センターにおいて検査を行ったところ、3名からEHEC O145:H-(VT1産生)が分離された。

医療機関から当センターに提供された初発患者の分離株を含め、患者4名の分離株は、ブドウ糖、乳糖、ソルビトール、マンニトールおよびL-アラビノースを分解、白糖、ラフィノースおよびラムノースを非分解、リジン脱炭酸反応は陰性、非運動性であり、VT1を産生した。PCR法により、stx1stx2eaehly の保有について調べたところ、いずれもstx1eaehly は陽性であり、stx2 は陰性であった。

また、ABPC、CTX、KM、GM、SM、TC、CP、CPFX、NA、FOM、STの11薬剤についてKB法により薬剤感受性試験を行ったところ、いずれもABPCのみ耐性であった。

一方、制限酵素Xba I によるパルスフィールド・ゲル電気泳動法(PFGE)では、すべて同一の遺伝子パターンを示した()。

当県内では、O157、O26、O111以外の血清群によるEHEC感染症は、毎年数件発生しているが、O145によるものは県内では初めての事例となった。また、当センターの検査に先立ち、医療機関より初発患者の分離株が速やかに提供され、その性状確認をあらかじめ行い、ラムノース非分解を確認できたことから、ラムノース・マッコンキー培地を用い、家族の検便時の釣菌を効率的に行うことが可能であった。市販の選択培地を利用できない血清群によるEHEC感染症の場合は、医療機関または検査機関からの速やかな分離株の提供とその性状確認が重要と思われた。

岩手県環境保健研究センター
松舘宏樹 岩渕香織 高橋雅輝 高橋知子 蛇口哲夫 佐藤徳行
太田美香子 後藤 徹 佐藤耕二
岩手県奥州保健所
石川美弥子 奥寺三枝子 八重樫和希 野村暢郎

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