カリフォルニア州南部から2009年3〜4月に報告されたブタインフルエンザA(H1N1)感染の2小児例―米国
(Vol. 30 p. 159-160: 2009年6月号)

米国疾病対策センター(CDC)は、2009年4月17日に、カリフォルニア州南部の近隣郡に在住する小児2人の発熱を伴う呼吸器感染を、ブタインフルエンザA(H1N1)への感染が原因であると確認した。両名から分離されたウイルスは遺伝子的に近縁で、アマンタジンとリマンタジンへの耐性を示した。オセルタミビルとザナミビルへの耐性は調査中である。また、ヘマグルチニン遺伝子を含む多くは米国で1999年から循環しているブタインフルエンザウイルスに近く、ノイラミニダーゼとマトリックス蛋白の遺伝子はユーラシア株に近いという、これまでに報告されたことのない、珍しい遺伝子セグメントの組み合わせを持っていた。いずれの患児にもブタとの接触歴は無く、感染源は不明であった。4月21日現在、両者に疫学的リンクは確認されておらず、その他の患者の発生も報告されていない。サーベイランスデータからは、当該地区およびカリフォルニア州のインフルエンザは減少傾向にある。感染源と、他の患者の有無については調査中である。

本事例は人類にとって新しい亜型のインフルエンザウイルスではないが、このブタインフルエンザA(H1N1)は季節性のヒトインフルエンザA(H1N1)とは明らかに異なっており、人口の大部分が免疫を持たず、また季節性のA(H1N1)のワクチンの効果が期待できない可能性がある。ブタとの接触歴が確認できないことから、人から人への感染が発生している可能性もあり、珍しい遺伝子組み合わせを持つため感染力も予測できない。

診断に当たる臨床医は、疫学的リンクがある場合に本感染を鑑別診断として考慮し、公衆衛生当局へ連絡の上、積極的に州の検査施設において診断検査を実施することが求められる。

症例報告
患者A:カリフォルニア州サンディエゴ郡に居住する10歳の男児で、4月13日に呼吸器疾患としてCDCへの報告があった。3月30日に発熱、咳、嘔吐で発症し、外来受診、鼻咽頭ぬぐい検体を臨床研究の一環として採取された。対症療法を受けた後、約1週間で症状は消失した。最初の検査でA型インフルエンザと診断されたが、ヒト型のH1N1、H3N2、およびH5N1のいずれも陰性であったため、検体は確認検査のためレファレンス施設を経てCDCに送付され、14日にはブタインフルエンザA(H1N1)と診断された。患者Aは今シーズンのワクチン接種は受けておらず、ブタとの接触歴も無い。患者Aの母親と8歳の弟に呼吸器症状を認め、弟は4月11日に再び咳、発熱、鼻汁で発症したが、検体は採取されていない。4月3日のテキサスへの旅行中の接触者を含め調査を行っている。

患者B:カリフォルニア州インペリアル郡在住の9歳女児で、3月28日に咳と40℃を超える発熱で発症した。インフルエンザサーベイランスのプロジェクトに参加しているクリニックを受診し、抗菌薬と抗ヒスタミン剤による治療を受け回復した。採取された検体は、海軍健康リサーチセンターを経てCDCへ送付され、4月17日にブタインフルエンザA(H1N1)と診断された。患者Bも今シーズンのワクチン接種は受けていない。発症4週間前にブタの展示がある農業フェアへ行った以外は、ブタとの接触歴も無い。患者Bの13歳の兄と同年齢の同居の従兄がインフルエンザ様症状を示したが、検査は行われていない。感染源と接触者の調査が続けられている。

(CDC, MMWR, 58, No.15, 400-402, 2009)

今月の表紙へ戻る


IASRのホームページに戻る
Return to the IASR HomePage(English)



ホームへ戻る