ニューヨーク市の学校でのブタ由来インフルエンザA(H1N1)ウイルス感染、2009年4月―米国
(Vol. 30 p. 160-161: 2009年6月号)

2009年4月23日、ニューヨーク市保健局は市内の高校(以下A高校)から約 100名の軽い(合併症のない)呼吸器疾患が発生しているとの報告を受けた。A高校は全校生徒2,686名、スタッフ228名からなる。4月23、24日の両日で222名の学生が体調不良を訴えて保健室を訪れ、そのまま帰宅していた。市保健局は、4月24日にメキシコでの大規模な呼吸器疾患の集団発生の報告を受けていたので、即座に職員をA高校に派遣し、4月24日(金曜日)に保健室の先生によって検知された5名の発症生徒と、近くの医師によって検知された4名の新規発症生徒の鼻咽頭ぬぐい液を採取した。週末の間に、4月27日(月曜日)からの臨時休校が決まった。呼吸器疾患の原因がブタ由来インフルエンザA(H1N1) ウイルス(S-OIV)の可能性もあるため、4月24日から市保健局は体調不良を訴えて学校を早退した残りの213名の学生への連絡も試みた。電話をした時点で症状が出てからまもない人に関しては、鼻咽頭ぬぐい液採取のため特定の救急外来受診を指示した。市保健局はA高校の近くにある開業医に、有症状の高校の生徒や職員から検体を採取するためのキットを配布した。4月26日、市保健局によって24日に集められた9検体のうち7検体がS-OIV陽性であるとCDCにより確認された。4月26日〜28日の3日間に、救急外来と地域の開業医から集められた42検体のうち、37検体が同様にCDCによってS-OIV陽性と確定された。

4月27日に感染が確認された44名に対し、市保健局は電話調査を行った。患者の年齢の中央値は15歳(範囲14〜21歳)、1名の先生(21歳)を除いてすべて学生で、44名中31名(70%)が女性、30名(68%)は白人でヒスパニック系でない人、7名(16%)がヒスパニック系、2名(5%)が黒人、5名(11%)がその他であった。また、4名が症状発症1週間前にアメリカ国内旅行を、1名が症状発症7日前にArubaに旅行していた。カリフォルニア州、テキサス州、メキシコへの旅行者はいなかった。

発症日は4月20日〜24日で、10名(23%)が4月22日に、28名(64%)が23日に発症していた。症状は咳(43名、98%)、発熱(42名、96%)、倦怠感(39名、89%)、頭痛(36名、82%)、咽頭痛(36名、82%)、鼻汁(36名、82%)、悪寒(35名、80%)、筋肉痛(35名、80%)が高頻度にみられた。その他に嘔気(24名、55%)、上腹部痛(22名、50%)、下痢(21名、48%)、息切れ(21名、48%)、関節痛(20名、46%)がみられた。最高体温を報告した35名の平均は39℃(37.2℃〜40.0℃)であった。全体として、42名(95%)の患者が発熱と咳または咽頭痛の少なくとも1つの症状を報告しており、CDCのインフルエンザ様疾患(ILI)の症例定義を満たしていた。1名が失神を認め入院したが、一晩経過観察ののち翌日に退院している。

4月26日、市保健局はe-メールによる自己申告制のILIサーベイランスをA高校の学生、職員、その家族を対象に開始した。解析初期の段階では、ILIの定義を満たす症状を報告している学生や職員関係者が非常に多く、ILIがすでに拡大していたことが判明した。また、何人かの学生は、4月20日の前の週にメキシコに旅行したと回答したが、S-OIVが確認された人は含まれず、何人が調査を行った時点で症状を呈していたかは不明であった。

(CDC, MMWR, 58, No.17, 470-472, 2009)

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