CDCは、現行インフルエンザワクチン接種前後の抗体応答を調べる研究に使った保存血清を利用して、新型インフルエンザウイルスA(H1N1)に対する交差反応を調べた。新型ウイルスは、A/California/04/2009をMDCK細胞で増殖させたものを使った。血清希釈は1:10から始めた。初期の検討で、中和法が赤血球凝集抑制法よりも新型ウイルスに対して抗体価が高く、かつペア血清での抗体価上昇をよく検出したので、以後は中和法を採用した。
6カ月齢〜9歳群の79名の小児では、接種前には新型ウイルスに対する抗体活性は認められず、接種後にも抗体上昇は検出できなかった(季節性ワクチンウイルスに対しては抗体上昇あり)。
一方、18〜64歳群(134名)の19%、60歳以上群(63名)の3%が、新型ウイルスに対し抗体上昇していた(季節性ワクチンウイルスH1N1に対しては、それぞれ74%と54%)。抗体上昇の程度は季節性ワクチンウイルスに比較して1/5 〜1/10であった。新型ウイルス抗体価が160以上であった者は、ワクチン接種前で18〜64歳群の9%、60歳以上群の33%であり、接種後でそれぞれ25%と43%になった。60歳以上群のワクチン接種前の新型ウイルスに対する抗体価はワクチン株に対する抗体価より有意に高かった。
MMWR編集委員会註:ウイルス蛋白HA1 領域のアミノ酸ホモロジーは、A/California/04/2009と季節性ワクチンウイルスとの間で72〜73%であるので、現行ワクチン株は新型インフルエンザに対し効果が無いだろう。60歳以上群で新型インフルエンザに対し抗体があったが、その一つの説明としては、この年齢群の一部の人は今回の新型ウイルスに近いウイルスに以前に感染していたのかもしれない。
(CDC, MMWR, 58, No.19, 521-524, 2009)