アフリカ諸国15カ国における1型および3型野生株ポリオウイルスの再伝播、2008年1月〜2009年3月
(Vol. 30 p. 189: 2009年7月号)

本報告は、2008年1月〜2009年3月の間に起きたアフリカにおける野生株ポリオウイルス(WPV)の新たな輸入例、および輸入例から発生したポリオ流行についてまとめたものである。輸入例は、他国に由来するWPVによって1症例以上のポリオ患者が発生することを指し、2例以上の患者が発生した場合、輸入WPVによるポリオ流行とする。

2008年1月〜2009年3月の間に、アフリカの15カ国で32事例の新たなポリオ輸入例とそれに伴うポリオ患者96例が発生した。29例の輸入例では、ナイジェリアが直接的もしくは間接的な輸出国であり、これに伴い68例のポリオ患者が発生した。3例の輸入例はインド由来であり、これに伴い28例のポリオ患者が発生した。輸入例が発生した地域での推定ワクチン接種率の中央値は、2004年の55%(31〜83%)と比較して2008年には74%(54〜90%)に上昇していた。この期間に輸入例が発生した地域は、西・中央アフリカ、東アフリカ、南・中央アフリカであり、3型ポリオは1型と比べて少なかった(32輸入事例中10事例)。

2008〜2009年にかけて、アフリカではナイジェリア、アンゴラ、チャド、スーダンの4カ国がWPVの輸出国であった。これらの国では公衆衛生に関する社会的基盤が弱いため定期予防接種率が低く、また、計画と実施が適切でないことにより重要な地域における補足的ワクチン接種活動(SIAs)が十分な人数の子供に行き渡っていない。アンゴラ、チャド、コンゴ民主共和国およびスーダンでは、この10年間に内戦を経験しており、チャド、コンゴ民主共和国およびスーダンでは、いまだに政情不安が続いている。

アフリカにおいて、1型および3型WPVを輸出しているのは、主にナイジェリア北部である。ナイジェリア北部では社会基盤整備に向けての課題が残されているが、治安面での問題はない。ナイジェリアでは、地域指導者の関与を促す試みの再構築、および、地方政府によるSIAsへの監視強化による問題解決が図られている。アンゴラはインド北部からのWPVの輸入により近隣諸国(コンゴ民主共和国、ナミビアを含む)へのWPVの輸出国となっており、ナミビアでは、アンゴラからの1型WPVの輸入により2006年に全国的な成人ポリオ流行の発生をみた。

2008年のWPV輸入に伴うポリオ流行は、2002〜2005年の流行(16カ国における47の輸入事例による1,335例のポリオ患者)と比べると小さかった。以前より迅速なポリオ患者の検出と実験室診断により、SIAsが早い段階で実行されたためと考えられる。また、報告されている経口生ポリオワクチン(OPV)接種率および急性弛緩性麻痺(AFP)サーベイランスデータから間接的に示されるとおり、アフリカ諸国における、乳幼児におけるポリオに対する免疫レベルは以前より向上していると思われる。WPV輸入を早い段階で検出し、迅速に対応するためには、最も末端の地域においても、WHO基準を満たした感度の高いAFPサーベイランスがなされることが不可欠である。WPV輸入例の迅速な検出と、適切、大規模かつ良く計画・指導されたSIAsの実施は、流行の規模を小さくし、早期のコントロールを可能とする。輸入WPV流行のリスクは、流行国に接する近隣周辺国でより大きいが、世界的な人的移動にともなうWPVの伝播は、世界中のポリオフリーの地域においても存在する。輸入例の早期の検出と高い免疫レベルを維持することにより、ウイルス伝播を最小限とすることが可能である。各国当局者は、WHOポリオ根絶諮問委員会の勧告に基づき、輸入例に対し大規模で効果的なSIAsを迅速に行うための行動計画を策定・改定するべきである。

(WHO, WER, 84, No.16, 133-140, 2009)

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